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金利の低下局面はグローバル株式低ボラティリティ戦略のアウトパフォームを示唆

本稿では、現時点で利下げを見込んでいる市場コンセンサスや2024年に金利が低下する環境になることを前提として、低ボラティリティ銘柄がどのようなパフォーマンスを示すのかを検証します。

執筆者

James C. Fallon
株式ポートフォリオ・マネジャー

Molly O'Brien
クオンツ・リサーチ・
アソシエイト

概要

  • 金利の低下、特に利下げが継続して実施される局面での金利低下は、景気サイクル後期において典型的な現象であり、株式市場はよりディフェンシブになり、低ボラティリティ銘柄が選好される傾向があります。
  • ここ数十年、配当利回りの上昇と金利の低下の間に明確な関連性は確認できません。

 

資本市場では、量的緩和、低金利、低インフレを特徴とする環境から、米国債利回りが20年ぶりの高水準に達する環境への転換が完了しつつあります。そのため、次に金利が低下する局面に備えグローバル株式低ボラティリティ戦略がどのようなパフォーマンスを示すのかについて、予想を立てるタイミングかもしれません。年初、市場では、米フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標が2024年1-3月期には現在の5%超の水準から低下を始め、2025年までに4%を下回ると予想されています(図表1)。

図表2では、1990年以降の米国の金利推移から、FF金利の誘導目標に関する米連邦準備制度理事会(FRB)の行動に基づいて金利の上昇期と下降期を特定すると、政策の転換は歴史的に米10年国債利回りの方向性に対応していることが分かります。

低ボラティリティ銘柄は、金利が低下する環境下でどのような動きを見せてきたのでしょうか?

図表3は、MSCIACWIの中で、ボラティリティが最も低い5分の2の銘柄群(「第1・第2五分位群」)とボラティリティが最も高い5分の2の銘柄群(「第4・第5五分位群」)の月次リターンを24カ月ローリングしてパフォーマンスを比較したものですが、2004年以降では、金利が低下するにつれて、低ボラティリティ銘柄が市場をアウトパフォームする傾向があることを示しています(濃い網掛け期間)。

図表4によれば、2022年は低ボラティリティ銘柄が相対的な強さを発揮したにもかかわらず、2020年の半ば以降は、高ボラティリティ銘柄が大幅に市場をアウトパフォームしました。

なぜ、金利が低下する局面でボラティリティの低いセクターがアウトパフォームするのでしょうか?

小売、自動車、住宅、素材などの景気敏感セクターは、金利が循環サイクルのピークに達し、経済成長が鈍化した後、相対的に弱くなる傾向があります。24カ月ローリング・リターンでパフォーマンスを比較すると、金利低下局面では景気の影響を受けやすい事業へのエクスポージャーの高い企業はアンダーパフォームする傾向があることが分かります。これは2008年から2009年、2012年から2013年、2015年から2016年、2019年から2020年に見られたケースです。一方、2004年から2023年の間の金利上昇局面では、景気敏感セクターはディフェンシブ・セクターをアウトパフォームしてきました(図表5)。

結論

本分析は、現時点で利下げを見込んでいる市場コンセンサスや2024年に金利が低下する環境になることを前提として、低ボラティリティ銘柄がどのようなパフォーマンスを示すのかを検討したものです。市場サイクルの中では、このような環境においては通常、低ボラティリティ銘柄は、高ボラティリティ銘柄をアウトパフォームしており、今後、高ボラティリティ銘柄や景気敏感銘柄へのエクスポージャーを持つポートフォリオに分散効果をもたらす可能性があることが示唆されます。

 

 

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