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Equity Insights

中型株に大きな投資機会

本稿では、中型株投資のメリットである構造的リターンプレミアム、分散効果、足元の魅力的なバリュエーション等について深堀りし、また過去のパフォーマンスや市場トレンドについても分析します。

執筆者 

Stephanie Lo, Ph.D.
クオンツ・リサーチ・
アナリスト

Erich Shigley, CFA
ポートフォリオ・マネジャー 

Derek Beane, CFA
インスティテューショナル・ 
ポートフォリオ・マネジャー 

 

概要 

  • 中型株は、分散効果、銘柄選択のさらなる多様化、そして大型株対比での構造的リターンプレミアムを提供します。
  • 中型株は最近アンダーパフォームしていますが、原因は相対バリュエーションの一貫した低下にあり、それが無限に続く可能性は高くありません。 
  • 中型株の足元の相対バリュエーションは、魅力的な投資開始のタイミングを示唆している可能性があります。

長年にわたり、時価総額は株価リターンの重要なファクターと見なされてきました。過去100年間、小型株は平均して大型株を上回るパフォーマンスを示してきました1。大型株より投資家の注目度が低いことから、相対的な割安状態や、ファンダメンタルズ情報が株価に反映されるまでの時差が生じやすく、その結果として高リターンにつながりやすいと言えます。

中型株は、特に注目を要する資産クラスです。小型株と比較して高い流動性、優れたクオリティ、低リスクの潜在性があり、且つサイズプレミアムも提供します。さらに、小型株のサイズプレミアムは広く知られていますが、中型株のサイズプレミアムは広く分析されておらず、よって大きな投資機会をもたらす潜在性があります。

中型株のファンダメンタルズの優位性を探る 

アナリストカバレッジが低い 
中型株は、大型株に比べてアナリストによるカバレッジが低いといえます。米国の中型株を対象とするRussell Midcap® Index(以下「Mid」)の構成銘柄のアナリストカバレッジは、米国市場の時価総額上位200社で構成するRussell Top 200® Index(以下「Top」)のほぼ半分程度であり、Topをカバーするアナリストが平均31名であるのに対し、Midでは17名にとどまります2。さらに、中型株の17%は推奨するアナリストの数が10人に満たない一方、Topにはそのような銘柄は1つもありません。中型株への関心の低さは、熟練した運用者にとっては銘柄選択によるアルファ獲得の機会につながります。

銘柄とセクターの集中 
Topインデックスは上位銘柄の比重が極めて大きく(しかも増大傾向にあり)、パッシブ運用の場合でも顕著な固有リスクを伴います。図表1が示す通り、Topインデックスでは、上位10%の銘柄(20銘柄)が時価総額の約60%を占めています。一方、Midの上位10%(80銘柄)が時価総額に占める割合は30%未満で、望ましくない銘柄集中の潜在性を大幅に低減しています。

Topインデックスの過剰な集中は、セクターにも及んでいます。図表2に示すとおり、Topはテクノロジー・セクターに顕著に集中しており、およそ3分の1を占めています。その一方で、エネルギー、素材、公益事業、不動産といったセクターはいずれも5%未満にとどまっています。これに対し、Midインデックスのセクター分布は比較的均等で、テクノロジーの構成比は約14%に過ぎず、Topインデックスで構成比が小さいセクターにも比較的均等に配分されています。バランスの取れたセクター配分は、特定のセクターへの過度なエクスポージャーのリスクを軽減し、多様な経済サイクルにおいて安定したパフォーマンスを促進する可能性があります。

リターン分散 
構成銘柄間のリターンの差異が大きい局面では、優れたアクティブ・マネジャーがインデックスをアウトパフォームする機会が増大する可能性があります。図表3は、Midインデックスの構成銘柄間のリターン分散がTopインデックスを頻繁に上回ってきたことを示しています。Midインデックスのパフォーマンス上位10%銘柄を抽出すると、年間リターンはパフォーマンス下位10%銘柄と比較して、100%ポイント超アウトパフォームする傾向が見られます。Topインデックスにおいては、図表3の通り、こうしたリターン分散はかなり小さい傾向があります。Midインデックスの高いリターン分散は、銘柄選択が重要となる投資機会を生み出します。

過去のサイズ・プレミアムを掘り下げる 
上図が示すように、中型株にはより優れた銘柄選択の機会、セクター分散の促進、発行体集中リスクの低減効果がありますが、リターンの向上も期待できるのでしょうか。図表4は、1979年1月から2024年12月までのMidとTopのパフォーマンスの数値を示したものです。中型株は年率で約1%アウトパフォームしています。リターンが高い中型株への配分を増やし、Top銘柄への配分を減らす戦略を取ることで、正のシャープレシオが実現します。

図表4:過去のMidとTopのパフォーマンス

年率換算リターン(キャッシュを除く) 

 

Mid vs. Top

   

年率リターン 

0.96%

MID

9.44%

 

標準偏差

7.12%

TOP

8.47%

 

シャープ・レシオ

0.14

出所:Bloomberg(1979年1月~2024年12月)、MFSによる算出。 

しかし、相対バリュエーションの変動の影響を排除すると、相対パフォーマンスのより精緻な比較が可能となります。中型株の超過リターンは、2つの要素の合計として表すことができます。

中型株の超過リターン=構造的プレミアム+相対バリュエーションの変化 
 

資産クラスとしての中型株の魅力を評価するためには、相対リターンの源泉であるこの2つの要素を切り離して考えることが重要です。構造的プレミアムは今後も存続すると考えており、これは中型株に投資する十分な理由となりえます。一方、相対バリュエーションの変動、たとえばMidがTopに対し継続的に割安になっていく状況は、永久的に続くものではなく、超長期にわたって相対パフォーマンスを牽引するものではありません。

たとえば、1997年から2024年にかけて、MidはTopを年間平均100bpsアウトパフォームしてきました3。一方、この期間中、MidのTop対比での相対バリュエーション(株価純資産倍率(PBR)で計測)は平均して年間45bps低下しました4。言い換えると、中型株と大型株のPBRの相対水準が一定であれば、Midの年率超過リターンは45bps上昇して1.5%近くとなっていたといえます。この分析結果は、中型株に構造的なプレミアムがあるとの確信を高め、またプレミアムの推定値も高めています(図表5)。また重要な点として、将来のバリュエーションが現在の水準から調整される可能性が、中型株の相対パフォーマンスの一段の追い風となる可能性もあります。これについては次のセクションで詳述します。

過去の相対バリュエーションとリターンから見た現在の環境

中型株のTop比での相対パフォーマンスと相対バリュエーションの関係を過去にさかのぼって検証すると有益な洞察が得られます。図表6は、中型株のネット超過リターン(推定年率1.45%の構造的プレミアムを差し引いた超過リターン)と、相対バリュエーションの推移を示しています。この2つのデータは非常に密接に連動しており、1997年から2014年まではネット超過リターン、相対バリュエーション変化が共にプラス方向に推移しており、平均値(年率換算)もそれぞれ2.4%と3.1%で類似した水準でした。一方、2015年から2024年にかけては共に急激にマイナスに転じ、-5.3%と-4.9%と、やはり近似した水準となりました。これは、1.45%と想定される構造的プレミアムを中型株の相対パフォーマンスがどれだけ上回るかには、相対バリュエーションが大きく影響することを示しています。

 

足元のバリュエーション状況を踏まえると、中型株投資の魅力的なタイミングであるといえるかもしれません。図表6は、中型株の相対バリュエーションが歴史的な低水準にあることを明確に示しています。また、相対バリュエーションの水準が反発した場合、中型株の相対パフォーマンスに劇的な影響を与える可能性が高いことも示しています。過去10年間にわたり中型株の相対バリュエーションが割安に推移してきた結果、中型株のPBRはTopの約60%にとどまっています。これは過去20年間ほどで最も低い水準です。極端なバリュエーションが一定期間継続する可能性はあるものの、この傾向が反転すれば、中型株の相対パフォーマンスに追い風となる可能性があります。

大型株市場の集中度が現在かなり高いことからも、中型株投資を開始する好機である可能性が示唆されます。我々の過去の分析では、サイズプレミアムは、集中局面のピーク後に訪れる分散局面でアウトパフォームする傾向にあることが示されています5。さらに、Midインデックスのセクター分散の高さは、分散局面において追加的なパフォーマンスの向上要因となり得ます。総じて、市場の集中トレンドが反転すると、中型株のパフォーマンスにさらなる追い風をもたらす可能性があります。

結論 ‒ 中型株への投資機会 

中型株は歴史的に、構造的なリターン優位性があり、企業およびセクター間の分散を促す効果があり、またアナリストの注目の低さによる恩恵を受けやすいといえます。こうした魅力的な特性は、リターンの向上、リスク管理の強化、より優れた銘柄選択機会の創出に寄与し得ます。さらに、現在の相対バリュエーションは過去と比べても魅力的な水準にあります。市場の集中度は高止まりしていますが、これが正常化すれば、中型株のアウトパフォーマンスにさらなる追い風となる可能性があります。

 

注釈 

1 1926年7月~2024年12月。KenFrenchのウェブサイトに掲載されているサイズ・ファクターを用いて算出。
2 出所:FactSet、MFSによる算出
3 使用されているバリュエーション・データの最長期間。
4 他のバリュエーション指標(売上高倍率など)を用いた場合でも、類似した結果が見られる。
5 「市場集中度ピークの向こう側」、2024年7月。 

 

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