インターナショナル大型バリュー株式- 忘れられた資産クラス
本稿では、セクター配分に特徴があり、米国株式との相関が低いインターナショナル大型バリュー株式へ分散投資するメリットについてご説明します。
執筆者
Steven R. Gorham, CFA
ポートフォリオ・マネジャー
David S. Shindler
ポートフォリオ・マネジャー
Nicholas J. Paul, CFA
インスティテューショナル・
ポートフォリオ・マネジャー
概要
- インターナショナル株式(グローバル株式から米国を除いた地域を投資対象とする運用)のバリュースタイルに対する投資家の資産配分は歴史的な低水準にありますが、これは主に米国以外の株式への配分比率が低位にとどまっていることと、米国の株価指数において集中リスクが続いていることによるものです。
- 米国株式の中でも特にテクノロジー関連のグロース株は10年以上にわたって人気を博してきましたが、市場の主導権が交代しつつあるように見受けられ、2025年から2026年初頭にかけては、インターナショナル株式、とりわけインターナショナル大型バリュー株式のパフォーマンスが米国株式を上回っています。同様にスタイルの観点からも市場の主導権は時間の経過とともに循環する傾向にあり、実際、インターナショナル株式市場では2022年初めの米利上げ開始以降、バリュー株がグロース株を大きくアウトパフォームしており、足元ではグロース株からバリュー株へのシフトが進行している可能性があります(図表1参照)。
- 現在のマクロ経済環境(高インフレ、高金利、米ドル高)、米国バリュー株式とインタ ーナショナル・バリュー株式のバリュエーション格差の拡大、および米国の株価指数における集中リスクは、インターナショナル・バリュー株式が持続的にアウトパフォームしていた時期を思い起こさせます。
- セクター構成や米国株式との相関の低さを考慮すると、分散投資のメリットを享受したい投資家はインターナショナル大型バリュー株への配分を検討する可能性があると考えます。
10年以上にわたり、投資家は金利とインフレ期待の低下を背景にデュレーションの長いグロース株を特に選好し、分散投資の長期的なメリットを軽視してきました。テクノロジー銘柄が多い米国株式市場を代表するベンチマークとしてS&P 500を見てみると、2025年12月までの15年間に年率14.1%のリターンを生み出しています。現在、S&P500に占めるテクノロジー・セクターの構成比率は約34%に達しており、セクター・リターンは年率20.1%となっています。一方、MSCI EAFE Value Indexは、銀行、金属・鉱業、石油大手など市場の不人気銘柄の比率が高いため、リターンは6.4%にとどまっています。この期間に投資家の間ではグロース株中心の米国株式市場への資金配分が急増し、インターナショナル株式の中でも特に大型バリュー株が取り残される状況になりました(図表2参照)。
米国株式の中でも特にテクノロジー銘柄を巡る熱狂ぶりを見る限り、投資家はかつてインターナショナル・バリュー株式が選好されていた時期が何度かあったことを忘れているようです。そのうちの1つでは、10年前比で米ドルが40%上昇し、S&P500がEAFE Value Indexを年率7.2%アウトパフォームし、米国株式市場では飛ぶ鳥を落とす勢いのテクノロジー銘柄への集中が進んでいました。また、当時は米国10年国債の利回りが5.25%、世界のインフレ率が3.4%であったなど、世界金融危機から約10年間続いたゼロインフレ・ゼロ金利の時代よりも現在の状況に近いと言えます。バリュエーションはというと、当時の米国株式の12カ月先予想PER(株価収益率)は24倍でした。これは、テクノロジー銘柄への集中度が高かった米国株式市場で割高感が非常に強まっていた時期の後のことです。もうお分かりですね。そう、これは2001年1月の話であり、現在のことではありません。次に何が起こったのかは誰もが知る通りです。つまり、米国のITバブル崩壊です。
2025年12月31日までの15年間で、米ドルは26%上昇し、S&P500はEAFE Value Indexを年率で9.7%アウトパフォームしています。また、米国10年国債の利回りは4.1%、足元の世界のインフレ率は3.0%、米国株式の12カ月先予想PERは22倍となっています*。さらに、最後の「人工知能(AI)の冬」が終わってから20年超が経ち、投資家は今や、なくてはならない存在に進化したAIの1つである大規模言語モデルに依存しきっています。ただし、生成AIを巡る投資家の熱狂の恩恵を受けている超大型テクノロジー企業のほとんどは優良企業であり、ITバブル期に破綻したPets.comやeToysとは比べられない点には留意が必要です。しかし、市場で大きな比率を占めるこれらテクノロジー企業の収益や利益率が、前例のない巨額の設備投資支出の影響を受けて、株価に織り込まれている非常に高い期待を下回ったり、バリュエーションが低下した場合には、相対的に割安なインターナショナル株式、特にインターナショナル・バリュー株式に莫大な投資機会が生じる可能性があります。
こうした状況を踏まえ、ITバブル後に起きた状況に注目したいと思います。運用リターンを左右するのは過去10年間ではなく、この先10年間の投資環境です。2000年代を見ると、2000年1月から2007年12月までのMSCI EAFE Value Indexのリターンは年率8.2%でした。これは、同期間のS&P500のリターンである1.7%の5倍に近い水準です。S&P500のテクノロジー・セクターに限って見ると、同期間のリターンは7.7%のマイナスでした。同期間にS&P500のPERは41%低下し、米国株式市場のリターンが低下する大きな要因になりました。一方で、インターナショナル・バリュー株式は企業収益と配当に全面的にけん引され、年率8%のリターンを上げました。S&P500とMSCI EAFE Value Indexの対象市場は構造が全く異なるため、ここでは、まず両指数の市場の構造を比較してみます。現在のMSCI EAFE Value IndexがS&P500に比べて依然として1標準偏差「割安」な水準にあることはもちろんですが、おそらく最も注目すべき相違点は、MSCI EAFE Value Indexは金融、素材、資本財、エネルギーといったデュレーションの短い景気敏感セクターの比率が高いため、テクノロジー・セクターの比率が高いS&P500に比べてはるかに高い分散効果を提供するという点です(図表3aおよび3b参照)。もちろんテクノロジー銘柄には依然として有望な投資機会がありますが、広範囲にわたるセクターや業種が将来の収益トレンドの恩恵を受ける位置づけとなるとみられることから、今後は分散投資が重要になるとMFSは考えます。
* 消費者物価指数で測定されるインフレ率は、特定の期間(1年ごとなど)ごとに固定または変更される一連の財およびサービスのバスケットを、平均的な消費者が購入する際にかかる費用の年間変化率を反映しています。本指標は、米ドル建ての不変価格(2015年基準)系列における、各前年度に対する変化率を示したものです。国際通貨基金(IMF)国際金融統計データベース、2025年12月31日現在。
収益トレンドは多くのセクターに恩恵をもたらすだろう
現在と2000年代初頭の市場環境(インフレ率、金利、相対バリュエーション、集中リスク、米ドル高)に類似性があることは明らかですが、おそらくもっと重要なことがあるとMFSは考えます。それは、テクノロジーとAIが日常生活のますます重要な部分を占めるようになると予想される中、将来の投資トレンドは過去10年間のようにテクノロジー・セクターの比率が高い米国株式だけでなく、幅広いセクターや産業に恩恵をもたらすことが期待できるため、今後は分散投資による長期的なメリットがお客様のポートフォリオにおいてますます重要になるということです。
こうしたトレンドには、設備投資の増加(テクノロジーに特化した運営コストのみにとどまらない)、さらにはインフラの更新、エネルギーおよびエネルギー転換、防衛および国家安全保障、サプライチェーンのリショアリング(国内回帰)およびローカライゼーションなどが含まれる可能性が高いと思われます。こうしたトレンドの恩恵を受けるのは多くの米国企業であると同時に、米国以外の企業にとっても追い風になると考えられます。確かに、米国は世界のテクノロジー分野で高いシェアを誇っていますが、幅広いセクターや産業の世界的な優良企業すべてがひとつの国・地域に存在すると考えるのは単純すぎるでしょう。さらに、高いインフレ率が予想以上に長期化した場合は、経済が長期の景気後退局面に陥らない限り、銀行は高金利の恩恵を受け続ける可能性があります。これは米国以外の銀行株に特に当てはまります。同資産クラスは欧州のソブリン金融危機以降、厳しい規制と純金利収入の減少への対応を迫られていましたが、現在ではリスクとレバレッジの削減や事業統合が劇的に進む中、依然として魅力的なバリュエーションで取引されているとみています。
分散投資
上述したように2000年代と現在の景気循環に類似性があるというのは重要なポイントですが、それに囚われて、分散投資による長期的なメリットを追求するという大局的な視点を見失ってはいけません。昨年まで、EAFE Value Indexに対する米国株式の直近5年間のローリングのアウトパフォーム期間(2024年12月31日時点)は、過去40年間で最長でした。実際に、2025年におけるインターナショナル株式の力強いパフォーマンスにもかかわらず、足元の米国株式のインターナショナル株式市場全般に対するアウトパフォーム幅は過去に例がない水準に達しており、現在の米国株式の株価は控えめに言っても極めて行き過ぎているように思われます(図表4参照)。そのため、いずれ現在の状況が反転する可能性は高く、そうなった場合、分散投資を行っている投資家はその恩恵を享受することができる可能性があると考えます。
2025年の力強いパフォーマンスに加えて、インターナショナル・バリュー株式に長期的に資産を配分することで、株式ポートフォリオにおいて米国株式との分散効果を高めることができると考えます。歴史的に分散投資にメリットがあることは投資家にもよく知られていますが、現在、インターナショナル株式の中でもバリュー株はコア株とグロース株を上回る高い分散効果が期待できる資産です。米国株式との相関の観点から見て、その分散レベルは歴史的に最も高い水準にあり、実際近年で高まっています(図表5aおよび5b参照)。
結論
状況が全く同じとまではいかないものの、現在と2000年代初頭からの8年間との間にはいくつかの類似点があり、ともにインターナショナル・バリュー株式が米国株式を大きくアウトパフォームしていました。インフレ率や金利、米ドル相場、バリュエーション格差、あるいは単に米国の株価指数における集中リスクの高まりを見ても、その類似性は際立っています。しかし、おそらくさらに重要なのは、分散投資がパフォーマンスの逆風となっていたゼロインフレ・ゼロ金利の世界から脱却した今、インターナショナル・バリュー株式に資産を配分することで並外れた分散効果を享受し、今後数年にわたって価値あるリターンの獲得が期待できる可能性がある、という点であると考えます。
考慮すべき重要なリスク:特定の市場への投資は、市場、為替、経済、産業、政治、規制、地政学などの厳しい状況によりより高いリスクを伴い、値動きが大きくなる可能性があります。また、株式市場および個別銘柄投資は値動きが大きく、発行体・市場・経済・産業・政治・規制・地政学などの状況に応じて、またはこれらの状況に関する投資家の認識によって、大幅に価値が下落する可能性があります。
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