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Big Mac:債券の投資機会-FIFOMO (The Fixed Income Fear of Missing Out)

本稿では、世界の債券市場で見られる新たな懸念「債券への投資機会を逃すことへの懸念(FIFOMO:The Fixed Income Fear of Missing Out)」についてご説明します。

Benoit Henri Albert Anne

Benoit Henri Albert Anne

Managing Director - Investment Solutions

近年、世界の債券市場では多くの懸念がみられましたが、さらに新たな懸念が生まれようとしています。それは、「債券への投資機会を逃すことへの懸念(FIFOMO:The Fixed Income Fear of Missing Out)」というものであり、債券投資家にとっては歓迎すべき懸念と言えます。バリュエーションが魅力的な水準にある中、中央銀行の利下げシグナルが強まるなど、マクロ経済環境が大幅に改善されていることから、債券への配分を増やす魅力的な投資機会が生じる可能性があると考えています。

ゴルディロックス的なマクロ経済環境が見込まれています。消費者の底堅い需要と企業の堅調なファンダメンタルズを見る限り、今のところ米国の景気後退リスクは低下しているようです。確かに、米国経済は減速局面にありますが、成長鈍化の影響は景気後退入りを警戒するほど深刻なものではなさそうです。また、景気循環指標も一定の減速リスクは示しているものの、差し迫った景気後退リスクを示すには至っていません(図表1)。インフレ面でも進展が見られ、米連邦準備制度理事会(FRB)が最も重視するインフレ指標であるコア個人消費支出(PCE)は現在妥当な水準にあり、来年には約2%に鈍化する見通しです。さらに重要な点として、FRBが引き締めサイクルの終了を示唆していることがあります。これは、「FRBの引き締め懸念」を警戒しなければならないマクロ経済環境が遂に転換期を迎えたことを意味しており、債券に有利な環境がもたらされつつあります。

債券のバリュエーションは依然として魅力的な水準にあります。長期的な視点を持つ投資家にとって、債券のバリュエーションは相対的に割安であると考えられます。特に、総利回りは足元の低下を踏まえても、過去と比較して魅力的な水準にあり、過去10年間における現在の総利回りのパーセンタイル順位を見ると、ほとんどの資産クラスが80%台後半か90%台に位置しています(図表2)。一部のセクターでは信用スプレッドが拡大しているようですが、バリュエーションを判断する上で重要なのは、期待トータル・リターンの主なけん引役となる総利回りであり、これには金利部分とスプレッド部分の両方が含まれています。さらに、スプレッドで見たバリュエーションにばらつきがあることも、相対価値戦略を採用するアクティブ運用会社に興味深い投資機会をもたらすと考えます。

債券では投資開始時の利回りが重要になります。現在の利回りが魅力的な水準にあることから、期待リターンの見通しはかなり改善しています。これは、投資開始時の利回りが現在のように高水準にあると、その後のリターンが高くなる傾向が強く見られるためです。例えば、投資開始時の利回りが5.16%の米国投資適格社債(投資開始時からの利回りの変動幅は30bps以内と想定)の場合、その後の5年間のリターンの中央値は5.97%、リターンのレンジは3.36%~7.17%となっています(図表3)。また、最近、将来的な利下げを示唆する主要中央銀行のシグナルが強まっていることも、債券の期待リターンの見通しを押し上げる要因になっています。米国投資適格社債のヒートマップを分析したところ、特に、最近のFRBの政策シグナルを踏まえると利下げが実施される可能性が高いことから、予想リターンが上昇する可能性が高まっていることが明らかになりました。具体的には、投資開始時の利回りが5.16%のケースで、今後1年間はスプレッドの変動がなく、金利が60bp低下すると仮定した場合、1年で9.43%のリターンが実現すると予想されています(図表4)。なお、1年間の予想期待リターンは、投資開始時の利回りから、金利とスプレッドの変動幅の合計に指数のデュレーションを乗じた値を差し引いて算出しています。例えば、投資開始時の利回りが6%、指数のデュレーションが7年、今後1年間のスプレッドと金利の変動幅の合計が50bps(0.50%)のマイナスの場合、1年後の期待リターンは9.5%(=6%-(-0.50%×7))と推定されます。

キャッシュ(短期金融商品)から債券に資金をシフトさせる時期が来ているようです。特に、過去2年間にわたって世界の債券市場が困難な時期を経験する中、投資家はリスク資産への投資に慎重になり、依然としてキャッシュの配分をかなり高めに維持しています。しかし、私たちは今、重要な転換点を迎えています。一般的に、中央銀行の政策金利がピークに達した直後にキャッシュがクレジットをアンダーパフォームし始める傾向がありますが、今がまさにその時期なのです(図表5)。特に利下げが視野に入ってきたことから、今後はキャッシュがクレジットをアウトパフォームする可能性は低くなると思われます。

債券の投資機会が拡大していると考えています。債券の種類は多岐にわたり、投資家のリスク選好度やニーズ、投資目的に応じて、それぞれに適した商品を選択することが可能です。当然ながら、債券にはデュレーション・リスクと信用リスクの両方が含まれており、この2つの組み合わせによって、リスク・リターン特性が異なる様々なサブ資産クラスが存在しています(図表6)。現在、デュレーション・リスクと信用リスクの両方を強気に見ており、債券の中でも特にエマージング債や欧州ハイイールド債といったリスクの高いセクターを選好しています。その理由として、マクロ経済見通しが良好なこと、および投資開始時の利回りが魅力的な水準にあることが挙げられます。

以上から、債券は再び魅力的な資産クラスになっていると考えられ、特に、景気後退リスクが低下する中、バリュエーションが歴史的な割安水準にある債券に投資機会があると見ています。

 

債券に投資する場合、発行体、借り手、取引相手もしくはその他の支払義務を負う主体、原資産の信用力の低下、あるいは経済的状況、政治的状況、発行体固有の状況もしくはその他の状況の変化による結果として、またはその影響により、価値が低下することがあります。特定の種類の債券は、これらの要因による影響が大きいことから、ボラティリティが上昇する可能性があります。また、債券には金利リスクが伴います(金利が上昇すると、価格は下落します)。したがって、金利上昇時にはポートフォリオの価値が減少する可能性があります。

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