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Strategist’s Corner
8 min

資本集約度の変化で増す非米国株式の投資妙味 

本稿では、先進国の資本集約度が高まっており、グローバル経済の構図が変わりつつある中で、エマージング株式が今後も堅調に推移すると考えられる理由を探ります。

執筆者

Robert M. Almeida
ポートフォリオ・マネジャー兼
グローバル・インベストメント・
ストラテジスト

概要

  • 先進国市場では資本集約度が構造的に高まっています。
  • この変化により、エマージング市場と先進国市場の資本集約度の格差が縮小する可能性があります。
  • リターンが全般的に圧縮され、銘柄間の格差が拡大する可能性を踏まえると、資本効率の高い企業を選別するアクティブ運用の重要性が一段と高まると考えられます。

株式市場では、往々にして結果と原因が混同されがちです。株式相場が上昇すると、投資家はその理由を好調な経済や政策効果に求めがちです。しかし、株式リターンの源泉は企業の資本収益率であり、GDPではありません。

ここ数十年、米国株式を中心に先進国株式がエマージング株式をアウトパフォームしてきましたが、その理由は先進国の経済成長率が高かったからではありません。先進国企業が損益計算書に対してバランスシートを縮小させ、より少ない資本で成長する術を身に付けてきたからです。ハードウェアからソフトウェアへ、工場から知的財産へのシフトを進め、またグローバルなサプライチェーンを活用して資産集約を国外に分散することで、資本の軽量化を図ってきました。

このシフトをけん引してきたのは米国企業で、投下資本利益率は力強く持続的に上昇し、バリュエーションも上昇しました。

一方のエマージング市場はまったく異なる道を歩んできました。実体経済は時に大きく成長してきたものの、多くの企業が資本集約型でした。インフラ、住宅、製造能力の拡大など、多額の初期投資を必要とし、回収にも長い期間を要する資本形態です。この投資は経済成長には寄与したものの、資本収益率は先進国企業と比較すると低いままでした。先進国株式よりエマージング株式を選好してきた投資家は、経済成長が必ずしも富の複利的な増大につながらないことを、ここから学びました。

この両者の違いは重要です。なぜならば、株価は経済成長のみに反応するわけではないからです。図表1が示すとおり、株価は投下資本の効率性に反応します。

先進国市場は、過去30年の大半の期間において資本効率のメリットを享受してきました。しかし、その状況は変わりつつあるのかもしれません。

資本集約度に変化

米国では、ここ数年で再び資本の集約が進んでいます。数十年にわたり資本の軽量化に取り組んできた企業が、持続的成長に向け再び多額の資本投下を始めています。人工知能(AI)インフラストラクチャー、例えばデータセンター、半導体製造、エネルギー生成、サプライチェーンの冗長化などに、多額の初期投資と継続的な再投資を要するためです。

こうした分野への投資は戦略的に不可欠であり、経済にも寄与するものの、資本サイクルの観点から見ると、資本集約度が上昇すると、ほぼ必ず限界収益率が低下します。魅力的な機会に資本が押し寄せると、競争が激化し、減価償却費が増加し、その後投資する資金の収益率は低下します。既存資産の収益率が当面高水準を維持したとしても同様です。

重要なのは、このシフトが、収益性とバリュエーションが歴史的な高水準にある中で生じているということです。高い収益率と潤沢な資本はまさに過剰投資を促す条件であり、その結果生じた過剰投資は多くの場合、最初は徐々に、しかしその後一気に、顕在化する傾向があります。

似たような状況は以前にも

1990年代後半から2000年代初頭、電気通信は変革をもたらすテクノロジーと見なされていました。光ファイバーネットワークは、データ使用量の急激な増大と画期的なビジネスモデルを約束していました。そのストーリー自体は概ね正しかったものの、結果は投資家にとって破滅的なものとなりました。要因は、テクノロジーそのものではなく、膨大な資本が投入された結果、社会が受け入れられる以上の過剰な供給が生じたことでした。ここから我々は、資本サイクルが供給過剰を引き起こし、リターンを希薄化し得るという教訓を学びました。

今日のAI主導の投資サイクルは、詳細こそ異なるものの、当時と似た構造を持っています。ある魅力的なテーマが莫大な資本を呼び込むと、将来のリターンはサプライズよりも失望に終わる可能性が高いことは、歴史が示唆する通りです。

エマージング市場企業のスタート地点はまったく異なる

上述のとおり、エマージング市場の企業は、長年にわたり先進国企業より高い資本集約度を維持してきました。その多くがすでに資本が乏しく、資金調達コストが高く、最適とは言えない効率性の下で運営してきました。しかし、先進国市場の資本集約度が幾分高まってきていることにより、エマージング市場企業と先進国企業の間の格差は構造的に縮小しつつあります。 

これが重要なのは、資本の限界効率は逓減していくためです。先進国企業の成長モデルが資本軽量型から資本集約寄りへと転換し、エマージング市場企業の資本集約がこれ以上進まないとすると、資本収益率の格差は縮小する可能性があります。ただし、それは先進国市場の資本収益率が低下するという意味です。

投資家が何を織り込んでいるのかも重要です。米国株式と非米国株式のバリュエーションに格差があるということは、米国の設備集約度の上昇が及ぼす影響を投資家が十分に織り込んでいない可能性を示唆しています。

米国株式を手放すべきだとか、エマージング市場が突然資本軽量型になると言っているわけではありません。要点は、資本集約度のわずかなシフトが変化の方向を左右し、それがリスク・プレミアムに対する投資家の許容範囲に影響を及ぼすということです。 

これが、2025年に非米国株式が米国株式をアウトパフォームした理由であり、織り込みプロセスが続けば今後も非米国株式のアウトパフォームが続くかもしれない理由です。

よってアクティブ運用が重要に

資本集約度が高まると、リターンが全般的に圧縮される一方で、リターンの分散が拡大する傾向があります。資本コストが低い局面では、資本軽量型の企業は軒並み好調に見えることがあります。しかし、資本コストが高まり、成長に一層大きな投資が必要となる局面では、資本配分が適切な企業とそうでない企業との差は顕著となります。

ベンチマークは、効率的な資本投下も非効率的な資本投下も区別しません。規律ではなく、時価総額に則ります。しかしアクティブ運用では、資本がどこに投下されているのか、どの程度のリターンを見込めるのか、またどのような競争環境下で投資されているのかを評価できます。

資本収益率が一様には上昇しなくなった世界では、資本配分を吟味することの重要性がさらに高まると我々は考えます。次の局面では、株式リターンの原動力となるのは、バリュエーションの全般的な高さではなく、個別銘柄の選別眼となると考えられます。

結論

資本の集約度は高まりつつあります。それに伴い資本収益率は調整されるでしょう。そして、それはいずれ市場に反映されます。ストーリーではなく価値創造のメカニズムに着目する投資家にとって、適応力のある企業とない企業とを見極めることが投資機会の鍵となるとみられます。このような状況を踏まえると、非米国企業、特にエマージング市場企業に優位性があると我々は考えます。

 

 

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