地政学リスクが市場に及ぼす影響
本稿は、2026年3月11日に収録されたウェブキャストの内容についてまとめたものです。同ウェブキャストでは、目下の中東紛争、および当面の市場への影響について、Signum Global Advisors会長のCharles Myers氏の見解を聴きました。
モデレーター
Benoit Anne
シニア・マネージング・
ディレクター
MFS ストラテジー・
アンド・インサイト・グループ
講演者
Charles Myers
会長、創業者
Signum Global Advisors
概要
- 軍事攻撃のピークから2週間程度で緊張が緩和に向かう可能性があります
- イランが弱体化すれば、中東および世界にとって長期的なプラス要因となります
- 原油価格は短期的には急騰するものの、新たな供給源を活用することで、その後は低下していく可能性が高いと考えられます
- 実物資産、景気敏感銘柄、防衛関連、石油サービスは、魅力的な投資機会です
中東情勢が激化し、市場が状況を注視するなかで、投資家の間に新たな懸念や疑問が生じています。本ウェブキャストでは、MFSのBenoitAnneをモデレーターに、足元の紛争、およびエネルギー価格や投資市場へ及びうる影響について、米政治リスクアドバイザリー会社Signum Global AdvisorsのCharles Myers氏に聞きました。
軍事攻撃のピークから2週間程度で事態は沈静化に向かう可能性
Myers氏の見解では、軍事攻撃のピークは1~2週間続き、その後は緩和に向かうと予想しています。紛争はイランの敗北に終わり、核兵器開発能力を除去され、石油輸出の要衝であるホルムズ海峡は米国とその同盟国に掌握されると見ています。悲観シナリオとしては、イランの軍事報復が衰えずに続くか、またはホルムズ海峡を通航する船舶への攻撃がエスカレートした場合、紛争は米国の想定よりも長期化する可能性があります。また、Myers氏は当面注視する点として以下を挙げています。
1) 原油価格が1バレル=100米ドルを上回る水準が数日間続かないか
2) 米10年債利回りが4.5%超に上昇しないか
3) 米軍に大きな人的被害が及ばないか
さらに、今年11月に行われる米中間選挙で、原油価格の高止まりを要因に民主党が上院で勝利する可能性があると政権が判断した場合には、事態の沈静化を早める可能性があります。
イランの弱体化は長期的に中東および世界にとってプラスに
6カ月以上先を見据えると、イランの弱体化、すなわちイランが近隣諸国への攻撃能力や核兵器の製造能力を失えば、それは中東および全世界にとってプラスとなるとMyers氏は考えています。中国は米国との首脳会談を4月に控え、またロシアはベネズエラからの撤退による影響に加えウクライナ侵攻を継続するなか、両国はこの紛争について意図的に沈黙を守っています。中国、ロシア、イラン、北朝鮮による枢軸が弱まれば、中国とロシアの立場は弱くなるだろうとMyers氏は指摘しています。
原油価格は短期的には急騰するものの、新たな供給源を活用することで、その後は低下していく可能性が高い
この危機がマクロ環境にどの程度影響するかは、原油価格の水準によります。Myers氏の見解では、紛争が大きく悪化しない限り、原油価格が再び1バレル=120米ドルを超える可能性は低く、短期的には90米ドル台後半にとどまるシナリオの方が現実的であるとみています。数週間にわたり高止まりが続いた場合、インフレ指標に影響が及び、米連邦準備制度理事会(FRB)は利下げサイクルを一時停止すると思われます。しかし、より長期的には、世界の石油備蓄の協調放出や、ベネズエラなどからの新たな供給が市場に流入する見込みから、原油価格は50米ドル台前半まで低下するとMyers氏は予想しています。Myers氏はまた、以下を想定して今後2週間で原油価格の上昇圧力は和らぐと予想しています。
1)トランプ米大統領が米国際開発金融公社を通じて船舶保険のセーフティネットを展開する
2) 軍事攻撃のピークの収束後、米国が海軍艦艇を派遣し石油タンカーを護衛する
3) 米国と同盟国がホルムズ海峡を掌握し、海軍艦艇や戦闘機によるパトロールを実施する
実物資産、景気循環銘柄、防衛関連、石油サービスに魅力的な投資機会
Myers氏は、マクロ経済の見通しと市場環境について引き続き前向きな見方をしています。米国は2026年にトランプ大統領が目標とする実質GDP成長率3%を達成し、スタグフレーションに陥る可能性は低いとみています。むしろ、拡張的な財政政策によりインフレが持続するリスクの方が高いとみています。Myers氏は、魅力的な潜在的投資機会のポイントとして以下を挙げました。
- 国・地域配分:米国をオーバーウェイト:AIによる雇用代替への懸念から無差別的な売りが生じており、クオリティの高いソフトウェア銘柄への魅力的なエントリーポイントが生まれていると見ています。欧州の選別的銘柄:一部の国(ギリシャ、イタリア、ポルトガル、スペイン)は堅調に推移している一方で、低迷している国(フランス、ドイツ)もあります。エマージング市場:楽観的に見ています。リスクオフ環境下での米ドル高により一時的な調整が生じていますが、中国やその他アジア諸国からの追い風に引き続き支えられていると見ています。
- セクター:実物資産、景気循環銘柄、防衛関連、石油サービス(例:製油)の分野へのローテーションの継続。
結論
地政学的リスクは高止まりしており、投資環境は不透明な状況が続いています。しかし、投資を継続し、クオリティの高い企業や国をオーバーウェイトとすることで、長期的に魅力的なリターンを獲得できる可能性が高いとMyers氏は述べています。
これらの見解は、投資助言、銘柄推奨、あるいはMFS の代理としてのトレーディング意図の表明と解釈されるべきではありません。