株式市場の主要テーマ:新たな時代における投資機会の舵取り
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- 株式市場の主要テーマ:新たな時代における投資機会の舵取り
執筆者:マーケット・インサイト・チーム
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概要
概要
急速に変化する今日のグローバル経済環境 下、投資のルールが大きく変化しています。構造改革、画期的な技術革新、エネルギー移 行、大幅な政策転換が市場を再編し、魅力的な投資機会を生み出しています。本レポートでは、未来を形作り、新たに定義する、以下の4つのテーマについて取り上げます。
- 非米国株式に復活の兆し:これまで長きにわたり米国株式に劣後してきた非米国株式市場が、財政刺激策、構造改革、AIサプライチェーン、割安な株価バリュエーションを背景に、新たな成長源として台頭しつつあります。
- AIの普及がゲームチェンジャーに:人工知能(AI)は単なる流行語ではなくなり、産業に革新を起こし、イノベーションを推進し、新たな価値創造の道を切り拓く原動力となっています。
- 岐路に立つエネルギーセクター:イノベーション、サステナビリティ、地政学と多様な視点からエネルギーセクターを分析し、世界的なエネルギー転換の波が生まれる中で、成長を捉えるユニークな投資機会を見出します。
- 新たな世界秩序の下でのクオリティとレジリエンス:財政優位や構造変化が投資展望を再構築する中、クオリティが高くレジリエンスのある企業に焦点を当てることが、もはや選択肢ではなく、不可欠な要素となっています。
本レポートは、4つのテーマについて掘り下げ、このダイナミックな新時代に適応し、成長し、投資機会を捉えるための実践的なインサイトをご提供します。これまで有効だった手法が今後も通用するとは限らない今、将来を見据えることが必要です。 -
非米国株式の価値を捉える
非米国株式の価値を 捉える
グローバル市場が進化を続ける中で、非米国株式投資の魅力が高まっています。欧州、日本、エマージング市場はそれぞれユニークな動向を示しており、精査に値します。これら地域では、構造改革、財政政策、人口動態、米国株式対比で割安なバリュエーションなどの恩恵を受けることが期待されています。
欧州:成長とバリュエーションの転換点
欧州株式は長年にわたり米国株式に劣後してきましたが、転換点を迎えようとしています。構造改革、財政政策、経済情勢の改善により、成長の素地が整いつつあります。過去にはソブリン危機、財政緊縮、エネルギー危機といった難局もあったものの、欧州株式のバリュエーションは、米国対比で記録的な割安水準にあります。
主な成長要因
- 財政刺激策とインフラ支出: ドイツが財政拡大で先行しているほか、欧州全体でも防衛およびインフラ投資が加速しています。こうした政策の取り組みは、企業の収益成長を押し上げるとともに、センチメントの改善につながることが期待されています。
- 金利の低下: 欧州は変動金利に対する感応度が高いため、金利の低下に伴い消費者および企業信頼感の改善が見込まれます。
- EU構造改革:EUは、資本の解放と欧州域内での資本流通を目的とした貯蓄投資同盟(SIU)の創設を目指しています。また、証券化規則の緩和が提案されており、実現すれば銀行資金が解放され、新たな投資商品の創出につながります。
短期的にはユーロ高が企業収益の足かせとなる可能性がありますが、欧州では長期的な構造改革が進行しており、成長見通しが改善しつつある割安な資産に投資を分散する機会をもたらすかもしれません。
日本:株主重視の政策とリフレによる追い風
株主重視の改革の進行、リフレ環境、魅力的なバリュエーションで、日本株が再度騰勢を強めています。
主なカタリスト
- 対米貿易協定: 日米貿易合意を受け日本経済の将来の不確実性が後退し、株式市場の急反発につながりました。
- コーポレートガバナンス改革: 自己資本利益率(ROE)向上のためのバランスシート改革を反映し、自社株買いは過去最高を記録しました。
構造改革の進展、魅力的なバリュエーション、貿易政策をめぐる不確実性の後退により、日本株は好調が続くと考えます。
エマージング市場:高成長経済におけるイノベーションとレジリエンス
エマージング市場は世界のGDP成長のおよそ65%を占め、グローバル経済成長の中心的存在となりつつあります。2025年はMSCI Emerging Markets Indexを構成する24カ国のうち19カ国が米国のGDP成長率を上回ると予測されており、エマージング株式投資は依然として魅力的です。
主な成長要因
- イノベーションにおけるリーダーシップ: エマージング市場の企業はAI、工業製品、再生可能エネルギーなどの分野でグローバルなイノベーターとして台頭しつつあります。例えば台湾、韓国、中国は、いずれもAIサプライチェーンにおいて重要な役割を果たしています。
- 米ドルの弱含み:エマージング株式は歴史的に米ドル安と強い相関があります。米ドル安は、貿易競争力の向上、資本流入の促進、コモディティ需要の追い風となります。
- 財政健全性の向上: 多くのエマージング諸国は対GDP債務比率が先進国と比べて低く、そのため積極財政や金融緩和政策を行う余地があります。
国別ハイライト
- インド: 引き続き構造改革が成長を押し上げており、また対米輸出はGDPの約2%にとどまることから関税の影響は限定的と考えられます。インフレ率と金利の低下が経済をさらに押し上げています。
- 中国: 景気刺激策とテクノロジーセクターの規制緩和が成長をけん引しているほか、柔軟な金融・財政政策によって融資および不動産市場の回復が支えられています。
検討事項- 欧州の資本財および銀行セクター: 財政拡大、インフラ整備、構造改革の恩恵を受けることが期待されます。
- 日本株: バリュエーションが割安な上、株主重視の政策と堅調な経済が追い風となっています。
- エマージング市場のイノベーター企業: 台湾、韓国、中国を中心に、AI、テクノロジー、資本財サプライチェーンのリーダー格企業が魅力的と考えます。
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世界を席巻するAIの普及
世界を席巻するAIの普及
人工知能(AI)は単なる技術革新にとどまらず、企業の価値創造にパラダイムシフトをもたらしています。あらゆる産業に普及し、ワークフローの再構築、イノベーションの促進、生産性の向上、そして新たな成長機会の創出を可能にしています。AIが及ぼす広範囲で複雑な影響を理解することが、長期的な成長を捉えるポートフォリオの構築に不可欠です。
AI普及のインフラ:初期の推進者
半導体企業やハイパースケーラーはAIの普及を支えるインフラであり、AIの爆発的な成長の立役者です。ハイパースケーラーだけでも2025年に約4,800億米ドルの設備投資が見込まれています。この莫大な投資に対し、投資家は以下のような疑問を抱いています。
- この支出は、市場におけるポジションを守る上で、どの程度まで存続可能なのか。
- この投資は足元の収益を希薄化させるものなのか、それとも新たな収益機会を創出し収益を増大させるものなのか。
- この支出がどのようにエコシステム全般に波及し、サプライヤー、顧客、競合他社に影響を与えるのか。
これら初期の推進者はAIの普及の土台を築いていますが、その投資の長期的な収益率は、AIが創出する収益の指数関数的な拡大に依拠する可能性が高いでしょう。
産業横断的に広がるAI利用
AIの普及は特定のセクターに限らず、多岐にわたって応用され、変革をもたらしています。投資にあたっては、AIが各産業の価値創造をどのように再構築しているかを理解することが必要です。
- ヘルスケア: AIを活用した診断や個人の属性に合った治療計画の策定により治療成果が向上し、コストの低減にも寄与しています。
- 小売り: AI分析を用いることでより高度にパーソナライズされたショッピング体験が実現し、顧客ロイヤルティや売上の向上につながっています。
- 製造業: 予知保全やサプライチェーンの最適化により、運営コストが低減し、効率性が向上しています。
- 金融サービス: AIによる不正検知、リスク評価、顧客エンゲージメントの強化が収益性の向上につながっています。
- ソフトウェア、SaaS: 大規模言語モデル(LLM)が収益化、機能性、導入のスピードを加速させています。エージェント型AIを活用している企業からは、収益と従業員の生産性の両面で大きな成果が報告されています。
- ロボティクス: AIがロボティクスの在り方を再定義しており、機械が複雑な作業を学習できるようになることで、フィジカル・インテリジェンスに依存する産業に変革を起こしています。
AIの導入は未曽有の速さで進んでいますが、消費者と企業との間では明確な差があります。
- 消費者による導入: 消費者のAI導入は急速に拡大しています。最近の米マサチューセッツ工科大学のレポートによると、企業の生成AI導入プロジェクトの95%が成果を達成できていない一方で、個人はほぼすべてが何らかの形で大規模言語モデル(LLM)を活用しています。
- 企業による導入: データの準備状況、セキュリティ、ガバナンス等への懸念から、企業による導入はまだ始まったばかりです。組織の要件に適う一貫した、信頼性のある、予測可能なアウトプットが必要とされるため、販売サイクルは遅くなる傾向があります。顧客サービスのチャットボットが競合他社の商品を推奨してしまうなど、AIツールが顧客体験や正確性を損なうことは容認されません。
こうした課題はあるものの、AIの導入は従来の技術革新を上回るスピードで進んでいます。障壁を克服した企業は、著しい競争優位性を獲得することが可能と考えられます。
検討事項1. リーダーとイノベーター
AIの導入だけでなく、その開発や斬新な応用を推進している企業を見極めます。投資に当たっては以下の属性を重視します。- AIの進歩に向けた高水準の研究開発投資
- 独自データを活用してAIによる効率性向上に取り組む戦略的パートナーシップ
- AIによって淘汰されるのではなく、AIによる業界内のイノベーションを推進する企業
2. AI推進者の先を見据える
半導体企業やハイパースケーラーも重要ではあるものの、AIの普及による経済的利益を享受できる産業や企業にも目を向けることが必要です。AI導入による効率化の恩恵を顧客に還元せざるを得ない企業よりも、収益性を直接的に高めることができるセクターに注目します。
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エネルギー市場への投資:イノベーションとサステナビリティに根差した成長機会
エネルギー市場への投資:イノベーションとサステナビリティに根差した成長機会
エネルギーは、イノベーション、サステナビリティ、地政学的再編の岐路に立っています。エネルギーセクターへの投資は、リターン獲得の機会であるだけでなく、ポートフォリオの分散を促進し、世界的な政策転換を含むリスクに対する戦略的なヘッジの機会ともなります。エネルギー分野の将来を形成する魅力的なトレンドを踏まえ、エネルギー企業に投資することで、クリーンで効率的なソリューションを促進しつつ、株式投資における強靭さを確保する手段を考慮することが重要である と考えます。
エネルギーセクター投資を通じたポートフォリオの強靭性
エネルギーセクターは、分散効果と構造面の長期的なトレンドへのエクスポージャーとが組み合わさったユニークなセクターです。特にサプライチェーンや天然資源価格を取り巻く不確実性の高い時期には、エネルギー関連資産を組み入れることで、地政学面のヘッジとして機能する可能性があります。クリーンエネルギーへの移行が進む中、効率性とサステナビリティの両立に取り組む革新的なエネルギー企業を組み入れることで、ポートフォリオの強靭性を高めることが可能です。
ただし、ある疑問が浮上してきます。目先の効率性追求は持続可能なのか、それとも「シェールを掘りまくる」ような慣行の先を見越す必要があるのかということです。シェール生産は過去数十年にわたる開発の成果で革命的に飛躍しましたが、その一方で、収益性の低下は長期的な戦略を講じる必要性を示唆しています。エネルギー転換が世界的に加速する中、伝統的資源の開発と再生可能エネルギー投資やインフラの近代化とのバランスに目を向けることが必要です。
エネルギー市場の主たる成長要因
エネルギー市場の進化を推進する要因は複数あります。そのトレンドは、先見性のある投資家に新たな機会を創出するだけでなく、実践的な長期戦略を講じる必要性があることを示唆しています。
1. 電化とインフラの近代化
電気自動車(EV)、ヒートポンプ、再生可能エネルギーの普及に伴い、電力需要がかつてないほどに増大しています。この急増に対応するためには、エネルギー貯蔵、スマートグリッド技術、送電システムなど、インフラの近代化に向けた大規模な投資が不可欠です。政府や企業が強靭性の高い電動化システムの構築に取り組む中、投資家はこのインフラの近代化に向けた資金調達に重要な役割を果たすことが可能です。2. 移行燃料としての天然ガス
天然ガスは、石炭と再生可能エネルギー源との重要なつなぎ役を果たしています。再生可能エネルギーはその間歇(かんけつ)性のためにピーク時のエネルギー需要を常に賄えるわけではなく、天然ガスがその隙間を埋める役割を果たし、エネルギーの安定供給を確保するとともに、経済成長を支え、石炭に比べて排出量を削減します。そのため、天然ガスは世界的なクリーンエネルギーへの移行過程における理想的な「移行燃料」とされています。3. 再生可能エネルギーの拡大
野心的なネットゼロ目標への取り組みが具体化し始める中、風力、太陽光、原子力など再生可能エネルギーの導入が世界的に加速しています。その一方で、供給の不安定性といった課題は補完的テクノロジーの重要性を浮き彫りにしています。蓄電池や天然ガスなどを取り入れることが、安定したエネルギー供給を維持する上で不可欠となります。4. 地政学的変化に伴うエネルギーシフト
欧州がロシア産ガスから米国産液化天然ガス輸入への転換を図るなど、世界の貿易構造の再編が生じています。こうした転換は、エネルギー市場の価格形成に長期的な影響を及ぼす可能性があります。5. 技術革新
AIを利用したエネルギー生産の最適化から炭素回収、水素製造、蓄電池に至るまで、技術革新がエネルギーセクターに変革をもたらしています。それぞれの技術革新が持続可能な未来に向けて主導的役割を果たし、最先端かつ拡張可能なソリューションを提供する企業への投資機会を生み出します。
検討事項- エネルギーインフラの建設や更新に携わる企業は、エネルギー供給に占める天然ガスの割合が拡大するに伴い、その恩恵を受ける可能性があります。
- エネルギー需要の増加により、探査や生産関連企業は恩恵を受ける可能性があります。
- 中流部門やパイプライン企業も、取扱量の増加による恩恵が期待されます。
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財政優位と構造的変革の時代における投資
財政優位と構造的変革の時代における投資
経済の新たなパラダイムへの転換が進む中、機関投資家には機会と共に課題も生じています。財政優位、高インフレ、地政学的転換、テクノロジー改革によって投資展望が再編される中、クオリティと強靭性に着目することが、このユニークな環境を乗り切るための枠組みとなると考えます。
財政優位への転換
時代は、インフレ低下と利回り低下から、財政優位へと移行しつつあります。財政優位の局面では、インフレ率が構造的に高く、政府支出が急増し、名目成長率が高まる傾向があります。このシフトは、相互に関連する複数の要因によって引き起こされています。
- 高インフレと高成長:工業の再活性化、サプライチェーンの再構築、防衛投資への膨大な財政支出により、インフレ率は目標を大幅に上回る水準で推移すると予想されます。米国の移民抑制政策を受けた労働力不足の悪化も、インフレ圧力をさらに高めています。
- 地政学的転換:世界は米国への一極集中から多極型へと移行しており、世界的に緊張が高まる中で、貿易構造が変容し、関税が課され、サプライチェーンが再編されつつあります。
- 期間プレミアムの上昇:債券市場では、インフレや財政赤字に対する懐疑的な見方を反映し、長期のリスクに対してより高いリターンが求められています。これにより資本コストが上昇し、バリュエーションにも影響を及ぼしています。
- 政策主導の投資:財政刺激策が資本投資を促しており、とりわけ資本財、半導体、インフラなどの資本集約型産業での投資が顕著です。例えば、7月に成立した米国減税法(OBBBA)の下での税制優遇措置には、企業収益率の改善、国内投資の促進、GDP成長の押し上げ効果などが期待されています。
財政支出は株式市場全般にとって好材料ですが、中でも足元の環境下でより高い成長が期待できるセクター・産業は以下の通りです。
- 資本集約型産業:資本支出の即時費用計上や税額控除などの財政優遇策は、資本財、製造、防衛、素材分野への投資を促進しています。これらセクターは、各国政府の財政支出拡大に伴い、政策支援と構造的需要の両面から恩恵を受けるとみています。
- テクノロジーとインフラ:ハイパースケーラーの設備投資は、テクノロジー分野のみならず、建設やエネルギー需要にも広がり、米国経済を支える主柱となっています。
不確実性の中で羅針盤となる「クオリティ」
このような環境下では、クオリティが最も重要となります。強固なバランスシート、フリーキャッシュフロー、利益成長、価格決定力を備えた企業は、インフレ圧力や金利上昇、政策、地政学的不透明感を乗り越える能力が高いと考えられます。投資に際しては以下を検討することが必要です。
- 優れた経営陣:優れたリーダーシップと執行実績を備えた企業は、関税、サプライチェーンの混乱、労働力不足などの課題への適応力がより高いといえます。
- ファンダメンタルズの強靭性:負債比率が低く、収益が安定しており、キャッシュフローが潤沢な企業は、ボラティリティの高い市場においても安定的に推移する可能性が高いといえます。
- 価格決定力:コストを消費者に転嫁できる企業は、インフレ環境下でも利益率を維持できる能力がより高いといえます。
株式市場の主たる牽引役は引き続きテクノロジーですが、すべてのグロース株が同じ状況にあるわけではありません。我々は、強固なファンダメンタルズと明確な成長軌道を有する企業が発展する一方、投機的とみなされる銘柄はリスクが高まる可能性があると考えます。
しかしながら、強靭性は確実なものではありません。投資にあたっては、関税が企業に及ぼす影響、グローバルサプライチェーンの課題、経営陣の執行能力を評価することが必要です。
検討事項経済の新たなパラダイムに対応するために、機関投資家においてはクオリティと強靭性のテーマに整合する実践的な投資戦略を検討することが賢明と考えます。
- 高クオリティ企業を重視: ファンダメンタルズが強固で価格決定力があり、強靭性の高いビジネスモデルを持つ企業を見極めること。バリュエーションが高い場合には、特にクオリティが重要となります。
- 財政的インセンティブを捉える: 資本財、素材、インフラ、半導体、防衛といったセクターは、政策主導の投資の恩恵が期待されます。設備投資計画が強固で執行能力の高い企業を選別します。
- グロースとバリューのバランスをとる: テクノロジー銘柄や明らかなグロース株に引き続き資本が流入するとみられる一方で、名目経済成長率の上昇はバリュー株、特に高配当株やインフレ耐性のある実物資産を有する企業の株価に追い風となります。
- リスクを注視: 関税リスク、サプライチェーンの混乱、地政学的緊張には警戒が必要です。優れた経営陣と適応力の高い経営戦略を備えた企業は、こうした不確実性への対応能力が高い可能性があります。
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結論:今後の投資環境下での舵取り
結論:今後の投資環境下での舵取り
2025年末に向けた投資展望は、大幅な構造変化、技術革新、地政学的再編が特徴となります。非米国株式の価値の解放、AI導入の利益化、エネルギー転換への適応、財政優位の環境への対応というテーマに共通するのは、クオリティと強靭性の見極めです。
投資においては、従来の戦略にとらわれず、先見性のあるアプローチを採用することが賢明です。過小評価されている非米国市場への分散投資、AIイノベーションにおけるリーダー格企業の識別、エネルギー市場における短期および長期の投資機会のバランス、インフレや政策主導型の環境で成長が見込まれる高クオリティ企業への着目などがこれに値すると我々は考えます。
投資家は、こうした変革的なトレンドをポートフォリオに取り入れることで、この変化するグローバル経済環境下で成長機会を捉えることが可能になります。今後に向けては、機動力、先見性、そして価値創造に重点を置き、不確実性の中で舵取りをする力が求められます。
株式市場および個別銘柄投資は値動きが大きく、発行体・市場・経済・産業・政治・規制・地政学、環境、公衆衛生などの状況に応じて、またはこれらの状況に関する投資家の認識によって、大幅に価値が下落する可能性があります。
小型株への投資は、より規模の大きい企業への投資と比べて値動きが激しくなる場合があります。
特定市場への投資は、市場、為替、経済、産業、政治、規制、地政学などの厳しい状況により高いリスクを伴い、値動きが激しくなる可能性があります。
当レポート内で提示された見解は、MFSディストリビューション・ユニット傘下のMFSストラテジー・アンド・インサイト・グループのものであり、MFSのポートフォリオ・マネジャーおよびリサーチ・アナリストの見解と異なる場合があります。これらの見解は予告なく変更されることがあります。また、これらの見解は情報提供のみを目的としたもので、投資助言、銘柄推奨、あるいはMFSの代理としての取引意思の表明と解釈されるべきではありません。予想は将来の成果を保証するものではありません。
1 UBS: Global Economics & Strategy 8 July 2025
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概要
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非米国株式の価値を捉える
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世界を席巻するAIの普及
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エネルギー市場への投資:イノベーションとサステナビリティに根差した成長機会
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財政優位と構造的変革の時代における投資
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結論:今後の投資環境下での舵取り
概要
急速に変化する今日のグローバル経済環境 下、投資のルールが大きく変化しています。構造改革、画期的な技術革新、エネルギー移 行、大幅な政策転換が市場を再編し、魅力的な投資機会を生み出しています。本レポートでは、未来を形作り、新たに定義する、以下の4つのテーマについて取り上げます。
- 非米国株式に復活の兆し:これまで長きにわたり米国株式に劣後してきた非米国株式市場が、財政刺激策、構造改革、AIサプライチェーン、割安な株価バリュエーションを背景に、新たな成長源として台頭しつつあります。
- AIの普及がゲームチェンジャーに:人工知能(AI)は単なる流行語ではなくなり、産業に革新を起こし、イノベーションを推進し、新たな価値創造の道を切り拓く原動力となっています。
- 岐路に立つエネルギーセクター:イノベーション、サステナビリティ、地政学と多様な視点からエネルギーセクターを分析し、世界的なエネルギー転換の波が生まれる中で、成長を捉えるユニークな投資機会を見出します。
- 新たな世界秩序の下でのクオリティとレジリエンス:財政優位や構造変化が投資展望を再構築する中、クオリティが高くレジリエンスのある企業に焦点を当てることが、もはや選択肢ではなく、不可欠な要素となっています。
本レポートは、4つのテーマについて掘り下げ、このダイナミックな新時代に適応し、成長し、投資機会を捉えるための実践的なインサイトをご提供します。これまで有効だった手法が今後も通用するとは限らない今、将来を見据えることが必要です。
非米国株式の価値を 捉える
グローバル市場が進化を続ける中で、非米国株式投資の魅力が高まっています。欧州、日本、エマージング市場はそれぞれユニークな動向を示しており、精査に値します。これら地域では、構造改革、財政政策、人口動態、米国株式対比で割安なバリュエーションなどの恩恵を受けることが期待されています。
欧州:成長とバリュエーションの転換点
欧州株式は長年にわたり米国株式に劣後してきましたが、転換点を迎えようとしています。構造改革、財政政策、経済情勢の改善により、成長の素地が整いつつあります。過去にはソブリン危機、財政緊縮、エネルギー危機といった難局もあったものの、欧州株式のバリュエーションは、米国対比で記録的な割安水準にあります。
主な成長要因
- 財政刺激策とインフラ支出: ドイツが財政拡大で先行しているほか、欧州全体でも防衛およびインフラ投資が加速しています。こうした政策の取り組みは、企業の収益成長を押し上げるとともに、センチメントの改善につながることが期待されています。
- 金利の低下: 欧州は変動金利に対する感応度が高いため、金利の低下に伴い消費者および企業信頼感の改善が見込まれます。
- EU構造改革:EUは、資本の解放と欧州域内での資本流通を目的とした貯蓄投資同盟(SIU)の創設を目指しています。また、証券化規則の緩和が提案されており、実現すれば銀行資金が解放され、新たな投資商品の創出につながります。
短期的にはユーロ高が企業収益の足かせとなる可能性がありますが、欧州では長期的な構造改革が進行しており、成長見通しが改善しつつある割安な資産に投資を分散する機会をもたらすかもしれません。
日本:株主重視の政策とリフレによる追い風
株主重視の改革の進行、リフレ環境、魅力的なバリュエーションで、日本株が再度騰勢を強めています。
主なカタリスト
- 対米貿易協定: 日米貿易合意を受け日本経済の将来の不確実性が後退し、株式市場の急反発につながりました。
- コーポレートガバナンス改革: 自己資本利益率(ROE)向上のためのバランスシート改革を反映し、自社株買いは過去最高を記録しました。
構造改革の進展、魅力的なバリュエーション、貿易政策をめぐる不確実性の後退により、日本株は好調が続くと考えます。
エマージング市場:高成長経済におけるイノベーションとレジリエンス
エマージング市場は世界のGDP成長のおよそ65%を占め、グローバル経済成長の中心的存在となりつつあります。2025年はMSCI Emerging Markets Indexを構成する24カ国のうち19カ国が米国のGDP成長率を上回ると予測されており、エマージング株式投資は依然として魅力的です。
主な成長要因
- イノベーションにおけるリーダーシップ: エマージング市場の企業はAI、工業製品、再生可能エネルギーなどの分野でグローバルなイノベーターとして台頭しつつあります。例えば台湾、韓国、中国は、いずれもAIサプライチェーンにおいて重要な役割を果たしています。
- 米ドルの弱含み:エマージング株式は歴史的に米ドル安と強い相関があります。米ドル安は、貿易競争力の向上、資本流入の促進、コモディティ需要の追い風となります。
- 財政健全性の向上: 多くのエマージング諸国は対GDP債務比率が先進国と比べて低く、そのため積極財政や金融緩和政策を行う余地があります。
国別ハイライト
- インド: 引き続き構造改革が成長を押し上げており、また対米輸出はGDPの約2%にとどまることから関税の影響は限定的と考えられます。インフレ率と金利の低下が経済をさらに押し上げています。
- 中国: 景気刺激策とテクノロジーセクターの規制緩和が成長をけん引しているほか、柔軟な金融・財政政策によって融資および不動産市場の回復が支えられています。
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世界を席巻するAIの普及
人工知能(AI)は単なる技術革新にとどまらず、企業の価値創造にパラダイムシフトをもたらしています。あらゆる産業に普及し、ワークフローの再構築、イノベーションの促進、生産性の向上、そして新たな成長機会の創出を可能にしています。AIが及ぼす広範囲で複雑な影響を理解することが、長期的な成長を捉えるポートフォリオの構築に不可欠です。
AI普及のインフラ:初期の推進者
半導体企業やハイパースケーラーはAIの普及を支えるインフラであり、AIの爆発的な成長の立役者です。ハイパースケーラーだけでも2025年に約4,800億米ドルの設備投資が見込まれています。この莫大な投資に対し、投資家は以下のような疑問を抱いています。
- この支出は、市場におけるポジションを守る上で、どの程度まで存続可能なのか。
- この投資は足元の収益を希薄化させるものなのか、それとも新たな収益機会を創出し収益を増大させるものなのか。
- この支出がどのようにエコシステム全般に波及し、サプライヤー、顧客、競合他社に影響を与えるのか。
これら初期の推進者はAIの普及の土台を築いていますが、その投資の長期的な収益率は、AIが創出する収益の指数関数的な拡大に依拠する可能性が高いでしょう。
産業横断的に広がるAI利用
AIの普及は特定のセクターに限らず、多岐にわたって応用され、変革をもたらしています。投資にあたっては、AIが各産業の価値創造をどのように再構築しているかを理解することが必要です。
- ヘルスケア: AIを活用した診断や個人の属性に合った治療計画の策定により治療成果が向上し、コストの低減にも寄与しています。
- 小売り: AI分析を用いることでより高度にパーソナライズされたショッピング体験が実現し、顧客ロイヤルティや売上の向上につながっています。
- 製造業: 予知保全やサプライチェーンの最適化により、運営コストが低減し、効率性が向上しています。
- 金融サービス: AIによる不正検知、リスク評価、顧客エンゲージメントの強化が収益性の向上につながっています。
- ソフトウェア、SaaS: 大規模言語モデル(LLM)が収益化、機能性、導入のスピードを加速させています。エージェント型AIを活用している企業からは、収益と従業員の生産性の両面で大きな成果が報告されています。
- ロボティクス: AIがロボティクスの在り方を再定義しており、機械が複雑な作業を学習できるようになることで、フィジカル・インテリジェンスに依存する産業に変革を起こしています。
AIの導入は未曽有の速さで進んでいますが、消費者と企業との間では明確な差があります。
- 消費者による導入: 消費者のAI導入は急速に拡大しています。最近の米マサチューセッツ工科大学のレポートによると、企業の生成AI導入プロジェクトの95%が成果を達成できていない一方で、個人はほぼすべてが何らかの形で大規模言語モデル(LLM)を活用しています。
- 企業による導入: データの準備状況、セキュリティ、ガバナンス等への懸念から、企業による導入はまだ始まったばかりです。組織の要件に適う一貫した、信頼性のある、予測可能なアウトプットが必要とされるため、販売サイクルは遅くなる傾向があります。顧客サービスのチャットボットが競合他社の商品を推奨してしまうなど、AIツールが顧客体験や正確性を損なうことは容認されません。
こうした課題はあるものの、AIの導入は従来の技術革新を上回るスピードで進んでいます。障壁を克服した企業は、著しい競争優位性を獲得することが可能と考えられます。
1. リーダーとイノベーター
2. AI推進者の先を見据える
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エネルギー市場への投資:イノベーションとサステナビリティに根差した成長機会
エネルギーは、イノベーション、サステナビリティ、地政学的再編の岐路に立っています。エネルギーセクターへの投資は、リターン獲得の機会であるだけでなく、ポートフォリオの分散を促進し、世界的な政策転換を含むリスクに対する戦略的なヘッジの機会ともなります。エネルギー分野の将来を形成する魅力的なトレンドを踏まえ、エネルギー企業に投資することで、クリーンで効率的なソリューションを促進しつつ、株式投資における強靭さを確保する手段を考慮することが重要である と考えます。
エネルギーセクター投資を通じたポートフォリオの強靭性
エネルギーセクターは、分散効果と構造面の長期的なトレンドへのエクスポージャーとが組み合わさったユニークなセクターです。特にサプライチェーンや天然資源価格を取り巻く不確実性の高い時期には、エネルギー関連資産を組み入れることで、地政学面のヘッジとして機能する可能性があります。クリーンエネルギーへの移行が進む中、効率性とサステナビリティの両立に取り組む革新的なエネルギー企業を組み入れることで、ポートフォリオの強靭性を高めることが可能です。
ただし、ある疑問が浮上してきます。目先の効率性追求は持続可能なのか、それとも「シェールを掘りまくる」ような慣行の先を見越す必要があるのかということです。シェール生産は過去数十年にわたる開発の成果で革命的に飛躍しましたが、その一方で、収益性の低下は長期的な戦略を講じる必要性を示唆しています。エネルギー転換が世界的に加速する中、伝統的資源の開発と再生可能エネルギー投資やインフラの近代化とのバランスに目を向けることが必要です。
エネルギー市場の主たる成長要因
エネルギー市場の進化を推進する要因は複数あります。そのトレンドは、先見性のある投資家に新たな機会を創出するだけでなく、実践的な長期戦略を講じる必要性があることを示唆しています。
1. 電化とインフラの近代化
電気自動車(EV)、ヒートポンプ、再生可能エネルギーの普及に伴い、電力需要がかつてないほどに増大しています。この急増に対応するためには、エネルギー貯蔵、スマートグリッド技術、送電システムなど、インフラの近代化に向けた大規模な投資が不可欠です。政府や企業が強靭性の高い電動化システムの構築に取り組む中、投資家はこのインフラの近代化に向けた資金調達に重要な役割を果たすことが可能です。
2. 移行燃料としての天然ガス
天然ガスは、石炭と再生可能エネルギー源との重要なつなぎ役を果たしています。再生可能エネルギーはその間歇(かんけつ)性のためにピーク時のエネルギー需要を常に賄えるわけではなく、天然ガスがその隙間を埋める役割を果たし、エネルギーの安定供給を確保するとともに、経済成長を支え、石炭に比べて排出量を削減します。そのため、天然ガスは世界的なクリーンエネルギーへの移行過程における理想的な「移行燃料」とされています。
3. 再生可能エネルギーの拡大
野心的なネットゼロ目標への取り組みが具体化し始める中、風力、太陽光、原子力など再生可能エネルギーの導入が世界的に加速しています。その一方で、供給の不安定性といった課題は補完的テクノロジーの重要性を浮き彫りにしています。蓄電池や天然ガスなどを取り入れることが、安定したエネルギー供給を維持する上で不可欠となります。
4. 地政学的変化に伴うエネルギーシフト
欧州がロシア産ガスから米国産液化天然ガス輸入への転換を図るなど、世界の貿易構造の再編が生じています。こうした転換は、エネルギー市場の価格形成に長期的な影響を及ぼす可能性があります。
5. 技術革新
AIを利用したエネルギー生産の最適化から炭素回収、水素製造、蓄電池に至るまで、技術革新がエネルギーセクターに変革をもたらしています。それぞれの技術革新が持続可能な未来に向けて主導的役割を果たし、最先端かつ拡張可能なソリューションを提供する企業への投資機会を生み出します。
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財政優位と構造的変革の時代における投資
経済の新たなパラダイムへの転換が進む中、機関投資家には機会と共に課題も生じています。財政優位、高インフレ、地政学的転換、テクノロジー改革によって投資展望が再編される中、クオリティと強靭性に着目することが、このユニークな環境を乗り切るための枠組みとなると考えます。
財政優位への転換
時代は、インフレ低下と利回り低下から、財政優位へと移行しつつあります。財政優位の局面では、インフレ率が構造的に高く、政府支出が急増し、名目成長率が高まる傾向があります。このシフトは、相互に関連する複数の要因によって引き起こされています。
- 高インフレと高成長:工業の再活性化、サプライチェーンの再構築、防衛投資への膨大な財政支出により、インフレ率は目標を大幅に上回る水準で推移すると予想されます。米国の移民抑制政策を受けた労働力不足の悪化も、インフレ圧力をさらに高めています。
- 地政学的転換:世界は米国への一極集中から多極型へと移行しており、世界的に緊張が高まる中で、貿易構造が変容し、関税が課され、サプライチェーンが再編されつつあります。
- 期間プレミアムの上昇:債券市場では、インフレや財政赤字に対する懐疑的な見方を反映し、長期のリスクに対してより高いリターンが求められています。これにより資本コストが上昇し、バリュエーションにも影響を及ぼしています。
- 政策主導の投資:財政刺激策が資本投資を促しており、とりわけ資本財、半導体、インフラなどの資本集約型産業での投資が顕著です。例えば、7月に成立した米国減税法(OBBBA)の下での税制優遇措置には、企業収益率の改善、国内投資の促進、GDP成長の押し上げ効果などが期待されています。
財政支出は株式市場全般にとって好材料ですが、中でも足元の環境下でより高い成長が期待できるセクター・産業は以下の通りです。
- 資本集約型産業:資本支出の即時費用計上や税額控除などの財政優遇策は、資本財、製造、防衛、素材分野への投資を促進しています。これらセクターは、各国政府の財政支出拡大に伴い、政策支援と構造的需要の両面から恩恵を受けるとみています。
- テクノロジーとインフラ:ハイパースケーラーの設備投資は、テクノロジー分野のみならず、建設やエネルギー需要にも広がり、米国経済を支える主柱となっています。
不確実性の中で羅針盤となる「クオリティ」
このような環境下では、クオリティが最も重要となります。強固なバランスシート、フリーキャッシュフロー、利益成長、価格決定力を備えた企業は、インフレ圧力や金利上昇、政策、地政学的不透明感を乗り越える能力が高いと考えられます。投資に際しては以下を検討することが必要です。
- 優れた経営陣:優れたリーダーシップと執行実績を備えた企業は、関税、サプライチェーンの混乱、労働力不足などの課題への適応力がより高いといえます。
- ファンダメンタルズの強靭性:負債比率が低く、収益が安定しており、キャッシュフローが潤沢な企業は、ボラティリティの高い市場においても安定的に推移する可能性が高いといえます。
- 価格決定力:コストを消費者に転嫁できる企業は、インフレ環境下でも利益率を維持できる能力がより高いといえます。
株式市場の主たる牽引役は引き続きテクノロジーですが、すべてのグロース株が同じ状況にあるわけではありません。我々は、強固なファンダメンタルズと明確な成長軌道を有する企業が発展する一方、投機的とみなされる銘柄はリスクが高まる可能性があると考えます。
しかしながら、強靭性は確実なものではありません。投資にあたっては、関税が企業に及ぼす影響、グローバルサプライチェーンの課題、経営陣の執行能力を評価することが必要です。
経済の新たなパラダイムに対応するために、機関投資家においてはクオリティと強靭性のテーマに整合する実践的な投資戦略を検討することが賢明と考えます。
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結論:今後の投資環境下での舵取り
2025年末に向けた投資展望は、大幅な構造変化、技術革新、地政学的再編が特徴となります。非米国株式の価値の解放、AI導入の利益化、エネルギー転換への適応、財政優位の環境への対応というテーマに共通するのは、クオリティと強靭性の見極めです。
投資においては、従来の戦略にとらわれず、先見性のあるアプローチを採用することが賢明です。過小評価されている非米国市場への分散投資、AIイノベーションにおけるリーダー格企業の識別、エネルギー市場における短期および長期の投資機会のバランス、インフレや政策主導型の環境で成長が見込まれる高クオリティ企業への着目などがこれに値すると我々は考えます。
投資家は、こうした変革的なトレンドをポートフォリオに取り入れることで、この変化するグローバル経済環境下で成長機会を捉えることが可能になります。今後に向けては、機動力、先見性、そして価値創造に重点を置き、不確実性の中で舵取りをする力が求められます。
株式市場および個別銘柄投資は値動きが大きく、発行体・市場・経済・産業・政治・規制・地政学、環境、公衆衛生などの状況に応じて、またはこれらの状況に関する投資家の認識によって、大幅に価値が下落する可能性があります。
小型株への投資は、より規模の大きい企業への投資と比べて値動きが激しくなる場合があります。
特定市場への投資は、市場、為替、経済、産業、政治、規制、地政学などの厳しい状況により高いリスクを伴い、値動きが激しくなる可能性があります。
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1 UBS: Global Economics & Strategy 8 July 2025
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