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Strategist's Corner
7 min

複利成長銘柄に長期投資する

本稿では、市場サイクルを通じた持続的な利益成長、大幅な損失の回避、長期投資成果の向上などが期待できる複利成長銘柄への投資についてご説明します。

執筆者

Robert M. Almeida
ポートフォリオ・マネジャー兼
グローバル・インベストメント・
ストラテジスト

概要

  • 市場の好況時には景気循環銘柄への投資熱が高まるものの、こうしたサイクルは短命であり、大幅な損失を被ったり回復困難な状況に陥る可能性があることを歴史が示しています。
  • 一方、複利効果のある銘柄は、サイクル全体を通じて比較的安定且つ持続的な利益成長を示す傾向があり、長期投資により適していると言えます。
  • 一部のAI企業には負のスケールメリットが見られるため、投資に際しては銘柄を選別することが特に重要です。

市場の好況時においては、景気循環銘柄は投資家の目に極めて魅力的に映ります。2000年代半ばのクレジットバブル、コロナ禍後のコモディティ価格の急騰、ハードウェアを中心とした現在のテクノロジーサイクルなど、いずれの時代にも言われてきたことがあります。それは、「今回は規模が違う」ということです。

歴史を振り返ると、「絶対に持つべき」と言われた銘柄が、実際には一時的なサイクルに終わった例が多々あります。例えば1720年代にはSouth Sea Companyが世界貿易を独占する企業として注目されましたが、その利益は期待に届かず、多くの投資家が資金を失いました。また、19世紀には鉄道が世界を変えると言われ、こちらは実現はしたものの、過剰競争と過剰供給により、やはり投資家の資金は失われました。

こうした歴史が教える教訓は、循環的なブームには必ず終わりがあるということです。「上昇サイクル」では高いアウトパフォーマンスから高揚感が得られますが、資本の総リターンはサイクル全体のパフォーマンスで決まります。

このような観点から、我々は構造的に「景気循環銘柄」よりも「複利効果のある銘柄」を選好しています。2026年を迎え、テクノロジー銘柄の「上昇サイクル」の過熱感の中で適切な投資判断を行うにあたり、サイクル全体で損失がどのように生じるかを、仮説を基に考えてみます。

損益計算書の比較

複利成長型と景気循環型の2つの企業を、期間10年を想定して比較して見てみます。

図表1に示す通り、両社ともスタート地点は売上高1億米ドル、利益率は30%と同じです。最初の数年間、複利成長型企業は売上高とコストが毎年10%ずつ安定的に増加し、利益率を維持します。「一度構築すれば何度も売れる」というビジネスモデルの下、高い営業レバレッジと差別化された製品で、安定した収益を生み出します。

 

図表 1:好況が終息すると景気循環型企業は不利に

 

1年目

2年目

3年目

4年目

5年目

6年目

7年目

8年目

9年目

10年目

 
             

安定

安定

好況突入

好況ピーク

好況後期 

不況

不況

回復

回復

 

複利成長型企業

売上高

$100

$110

$121

$133

$146

$161

$177

$195

$214

$236

 

売上高成長率

 

10%

10%

10%

10%

10%

10%

10%

10%

10%

 

コスト

$70

$77

$85

$93

$102

$113

$124

$136

$150

$165

 

コスト上昇率

 

10%

10%

10%

10%

10%

10%

10%

10%

10%

 

利益 

$30

$33

$36

$40

$44

$48

$53

$58

$64

$71

$478

利益率

30%

30%

30%

30%

30%

30%

30%

30%

30

30%

 

景気循環型企業

売上高

$100

$105

$110

$154

$201

$221

$132

$109

$114

$120

 

売上高成長率

 

5%

5%

40%

30%

10%

-40%

-18%

5%

5%

 

コスト

$70

$74

$77

$93

$110

$126

$106

$87

$86

$84

 

コスト上昇率

 

5%

5%

20%

19%

14%

-16%

-18%

-2%

-2%

 

利益

$30

$32

$33

$62

$90

$95

$26

$22

$28

$36

$454

利益率

30%

30%

30%

40%

45%

43%

20%

20%

25%

30%

 

この例は仮説であり、実際のデータを表すものではありません。情報提供のみを目的としています。
 

その後、好況期が訪れます。新たなテクノロジーの出現や経済の変化が景気循環型企業に直接恩恵をもたらします。売上高は40%と急増し、利益率が45%に急拡大し、投資家はそれに魅了され、複利成長型企業から景気循環型企業へと乗り換えます。その後の3年間、景気循環型企業の利益率と利益は市場平均を大きく上回ります。

不況期の非対称性

7年目には、新たな競争が市場に潤沢な供給をもたらし、サイクルはピークを迎えます。景気循環型企業の売上高は40%減少し、大幅なコスト削減や人員削減にもかかわらず、利益率は半減します。

これは仮定のシナリオですが、その前提は史実に根ざしており、投資家が見落としがちな数字の落とし穴を指摘しています。それは、景気循環型企業の40%減少した売上高が6年目のピーク水準を回復するためには、単なる「好調」なだけでは足りず、1年間で67%の売上成長を達成しなければならないということです。複利成長型企業にはこのような大きなハードルは生じません。

フルサイクルでの結果

両社ともに収益は10年間で計約4,500億米ドルに上りますが、その道のりは異なります。下図のとおり、複利成長型企業の年間利益は景気循環型企業のほぼ2倍であり、かつ変動も抑えられています。 

景気循環型企業は好況期においては短期間で高収益を達成したものの、フルサイクルの長期間では複利成長型企業に劣後しました。

結論

近年、製品サイクル、特にAIに牽引されるテクノロジー・ハードウェアとの連動性の高い企業への投資が活発となっています。今日のAIモデルの中には、クエリごとに収益を上回る高額な計算コストが発生し、スケールメリットを享受できないものもあります。これは、ネットワーク効果が市場の独占状態と歴史的な利益成長を生み出したインターネット2.0時代とは真逆の現象です。こうしたファンダメンタルズの変化を踏まえると、現代のテクノロジービジネスに広範に投資するのではなく、選択的に投資することが必要だと我々は考えます。

投資において「クオリティ」という言葉はあまりに頻繁に使われているため、その本質的な意味が薄れていますが、クオリティとは単なる表面的評価ではなく、「不況の影響を回避する能力」を指すものです。

我々は、差別化された製品と拡張性の高いビジネス構造を持ち、複利的な利益成長が可能と考えられる企業を選好しています。複利効果のある銘柄は、今日のような好況下では劣後することもありますが、ファンダメンタルズを重視する長期投資家には、しばしば優れた投資成果をもたらすことがあります。  

 

 

当レポートの中の意見は執筆者個人のものであり、予告なく変更されることがあります。また意見は情報提供のみを目的としたもので、特定証券の購入、勧誘、投資助言を意図したものではありません。予想は将来の成果を保証するものではありません。過去の運用実績は将来の運用成果を保証するものではありません。

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