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The Big Mac
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クオリティ銘柄:循環的低迷から構造的な投資機会へ

本稿では、クオリティ銘柄投資に2025年の市場環境が及ぼした影響と、長期的な見通しは明るいと考える理由についてご説明します。

執筆者

Ross Cartwright
リード・ストラテジスト
ストラテジー・アンド・
インサイト・グループ

概要

  • クオリティ銘柄には、長期的な観点から揺るぎない価値があります。規律ある資本配分、底堅い収益力、健全なバランスシートが、優れた複利成長を支えています。
  • 収益性はクオリティの重要な要素ですが、それだけでは十分ではありません。収益性はレバレ ッジや会計処理により歪められる可能性があるため、バランスシートの強靭性や収益の持続性も重要な要素となります。
  • 多様なクオリティ銘柄を支える環境が再び整いつつあります。バリュエーション・プレミアム は調整され、収益のすそ野が広がりつつあり、ディフェンシブ銘柄が安定化する中で、市場の集中が改善しています。

要約

クオリティ銘柄への投資は、シンプルながら不変の前提に基づいています。それは、底堅い利益、規律ある資本配分、強固なバランスシートを備えた企業は、長期的に安定して価値を創出するという不文律です。ただし近年は、ベータが高く、景気に連動しやすく、且つしばしばクオリティが低いセグメントが市場を主導するなど、クオリティ・スタイルにとっては厳しい環境が続いています。背景にあるのは金利低下、クレジットスプレッドの縮小、リスク選好の高まりなどで、高クオリティ企業のファンダメンタルズは強固であるにもかかわらず、広範なクオリティ銘柄への投資を抑制する結果となっています。

クオリティのファクターの中では、収益性が長期的にプラスに寄与していますが、利益の安定性やバランスシートに関する指標は一貫性を欠いており、通常は堅実な寄与度を示す収益性でさえ、2025年には一時的にマイナス寄与となりました。このことは、クオリティを多面的に定義することの重要性を浮き彫りにしています。収益性のみでは十分な指標とはなりません。レバレッジ、会計効果、資本構成により指標が歪められる可能性があるため、真に持続可能性のある事業基盤を識別するためには、複数の指標を用いることが重要です。

今後に目を向けると、歴史的にクオリティを支えてきたいくつかの要因が再び整いつつあります。バリュエーション・プレミアムはより妥当な水準に調整され、利益成長のすそ野も拡大が予想されています。また、ディフェンシブなファンダメンタルズも安定しつつあります。こうした変化は投資環境のバランスが改善に向かうことを示唆しており、クオリティを定義する要因が再認識され、持続性、レジリエンス、規律ある資本配分が再びリターンの原動力となる可能性が高まっています。

最近のパフォーマンスとファクター状況

クオリティ銘柄は2025年に市場に劣後しました。クオリティの低い銘柄がアウトパフォームし、欧州のクオリティ銘柄にとっては過去最悪の年となりました1。2025年の特徴として、損失計上企業が利益計上企業をアウトパフォームしたことが挙げられます。これは流動性とセンチメントが一時的にファンダメンタルズを凌駕したことによるものです。その要因は単純です。金融政策やクレジット状況がリスクプレミアムを圧縮する局面では、市場は収益の持続性やバランスシートの健全性よりも、サイクル初期の収益成長の可能性とボラティリティを重視するためです。この非対称性が薄れ、利益成長のすそ野が拡大すると、ファンダメンタルズには再び分散が生じる傾向があります(図1、2参照)。

長期的な観点からは建設的な状況が続いています。米国では、1995年以降、クオリティ銘柄は市場平均を年率約2.4%上回る複利成長を遂げています。直近ではアンダーパフォームしていますが、これは過去の循環の底で一時的にファンダメンタルズよりも流動性やリスク選好度が重視された状況を反映しています。

クオリティ・ファクターを分解する:何が逆風となったのか

クオリティは多面的なファクターであり、通常、以下の3つの軸で定義されます。

  1. 収益性(例:自己資本利益率(ROE)、利益率、資本収益率)
  2. 低レバレッジ(バランスシートの健全性と慎重な資金調達)
  3. 収益の安定性(収益とキャッシュフローの持続性と予測可能性)

従前より、こうした特性が揃った企業には、高い競争力、規律ある資本配分、そして底堅い収益力が見られました。しかし、この3つは常にセットになって動くわけではなく、近年は顕著な乖離が見られます。

収益性:収益性は歴史的に最も一貫して評価されてきたクオリティ・シグナルです。その傾向は長期的には変わりないものの、2025年にリスクオン志向が強まり、ROEの低い企業がROEの高い企業を一時的にアウトパフォームすると、クオリティ・シグナルとしての収益性の機能は薄れました。 

低レバレッジ:通常、バランスシートの健全性はクオリティをサポートしますが、良好なクレジット状況とタイトなスプレッドにより、投資家が見出していた財務の保守性の価値が低減しました。2025年年初、米国では高レバレッジ銘柄が堅調だった一方で、米国外では皮肉にも債務水準の低さが逆風となりました。

収益の安定性:これは特に米国において最も大きくマイナス寄与しました。収益の循環的な加速やAI関連の成長テーマに着目した投資家行動を背景に、収益の安定した企業のパフォーマンスは収益変動の大きな企業に劣後しました。安定性は、不透明な状況下でクオリティが発揮するディフェンシブ特性の核ですが、少数銘柄によるモメンタム主導の市場では、その特性が十分に発揮されませんでした。

なぜ収益性以外の要素も必要なのか

収益性(例:ROEなど)は長年にわたりクオリティに大きく寄与してきましたが、収益が高いだけではクオリティの定義に足りません。ROEはレバレッジ、自社株買い、業種、資本集約度、無形資産の扱いなどによって数値上高くなる場合があります。したがって、収益性にバランスシートの強靭性、収益の持続性、経営の規律、ガバナンスの健全性を加えて「複合的」に定義することが、真に持続性のあるビジネスを抽出し、ROEのような指標への構造的なバイアスのチェック機能を果たすと考えます。近年におけるサブファクター間のばらつき、特に安定性やレバレッジが発する一貫性のないシグナルは、多くの高クオリティ企業が魅力的なペースで利益を積み上げ続けていたにもかかわらず、複合的なクオリティ・ファクターが苦戦した理由を語っています(図表4参照)。

ここ5年間はクオリティ・スタイルにとって試練の時期であり、同時に重要な真実も浮き彫りにしました。それは、クオリティの価値は単一の特性や恒常的なアウトパフォームに依拠するものではないということです。クオリティの強みは、複数の側面がサイクルを通じて相互に補強し合う点にあります。それは多くの場合、直ちには認識されず、背後で静かに複合的に作用し、いずれ顕在化します。そういった意味で、最近のリターン低迷は、クオリティの重要性が低下したことということではなく、単にスタイルが本来持つ循環性と、その効果が即効性ではなく持続性から生じることを反映しているに過ぎません。

マクロ情勢:なぜクオリティ・ファクターが低迷したのか

最近のクオリティ・ファクターの低迷は、ファンダメンタルズが破綻したということではなく、マクロ経済的な現象として理解するのが適切です。以下の要因が複合的にクオリティ・ファクターの逆風となりました。

  • 金利低下によりサイクル初期における潜在的利益成長が押し上げられた。
  • クレジットスプレッドの縮小により、強固なバランスシートを持つ企業に通常生じるプレミア ムが縮小した。
  • 投資家のリスク選好が高まり、収益のレジリエンスよりも高ベータやモメンタムが寄与した。
  • 市場の集中、特にAI関連銘柄と景気循環銘柄に集中したことにより、分散投資や安定性の重要性が低下した。

こうした要因はいずれも、クオリティが捉えようとするビジネスモデルの構造的な劣化を反映したものではありません。むしろ、ベータやレバレッジ、循環性が一時的に選好されたことを示しています。我々の経験上、こうした要因がグローバル株式市場で長期的な勝ち要因となることは稀です。

なぜクオリティが構造的に重要なのか 

その根拠は歴史的要素だけでなく、経済的要素にもあります。

  • 資本規律:投下資本利益率が高い企業は、通常、効率的な再投資を行います。
  • 財務の柔軟性:健全なバランスシートは、景気後退や予想外のイベント発生時にも多様な選択肢を確保できます。
  • 収益の持続性:予測可能な収益は、ドローダウンを抑えつつ持続的な価値創造を支えます。

こうした要素は、流動性主導の集中した市場環境下では収益につながりにくい可能性があるものの、消失するものではありません。近年、収益性は重要である一方、それのみではクオリティの定義としては不十分であることが改めて認識されています。収益性のみでは不完全であり、バランスシートや利益指標の裏付けが必要です。

見通し:クオリティを再び支援する条件 

マクロリスクの高止まり、リスクプレミアムの縮小、市場の集中が継続している現状は、投資家がそうした脆弱性に対して十分なリターンを得られていないことを示唆しています。こうした環境下では、レジリエンス、健全なバランスシート、安定的な収益といったクオリティを定義する特性の重要性はむしろ高まっていると言えます。

2025年は各地域でクオリティ・プレミアムが大きく縮小し、相対バリュエーションが調整されました。これにより主な逆風が緩和され、市場がモメンタムよりもファンダメンタルズに重点を置くようになるに伴い、将来の超過リターンのための強固な基盤が回復すると考えられます。 

2026年は収益成長のすそ野が広がり、超大型株とその他株式との極端な格差は縮小するものと予想しています。ヘルスケアと生活必需品セクターのファンダメンタルズは安定傾向にあり、資本財・サービス、一部の金融、一部の情報技術などクオリティ志向の景気循環株は、期待値が調整される中で、見通しが改善しているようです(図表10参照)。

マクロリスクが差異を生み、クオリティの優位性を促す

マクロ経済にも注意を払う必要があります。財政拡大、地政学的緊張、国内の政治的分断、サプライチェーンの再編、そして長引くインフレボラティリティの下、多岐にわたるシナリオが想定されますが、現在のバリュエーションや低い株価ボラティリティはそうしたシナリオを完全には織り込んでいない可能性があります。こうした要素は市場を非対称にし、バランスシートの健全性や価格決定力に欠けるビジネスモデルの許容範囲を限定します。

ここ1年間の金相場は、この緊張関係を明確に映しています。株式市場が安定した基調を織り込んでいるのとは対照的に、リスク資産と並ぶ金相場の堅調は、システミックリスクや地政学的ショックへのヘッジ需要が続いていることを示唆しています。この二極性は、最近の相場が平穏であるからといってリスクが低減したとみなすべきではないことを浮き彫りにしています。

ポジショニングへの影響 

今後の道筋は直線的とはならず、景気刺激的な財政・金融政策により、景気循環銘柄が市場をけん引する足元の状況が長期化する可能性があります。ただしその効果は、企業利益のすそ野が広がりバリュエーションが正常化するにつれて薄れていきます。市場を動かす要因が多様化すると、環境はよりバランスの取れたものとなります。加えてバリュエーション格差が縮小し、期待値がリセットされれば、市場のけん引銘柄の幅が拡大する状況が整います。

政策支援が緩やかになるにつれて、格差は流動性ではなく、ファンダメンタルズによって決まるべきと考えています。循環的な刺激が薄れるに伴い、幅広いビジネスモデルがリターンに寄与できるようになります。

一時的な逆風はあるものの、堅調が続く

クオリティ投資は、持続性のある経済推進要因に根ざしています。2025年のアンダーパフォーマンスは、金利低下、収益加速、クレジットスプレッドの縮小、リスク選好の高まり、市場の集中という市場環境を反映したものであり、クオリティの高い企業のファンダメンタルズが弱体化しているわけではないと我々は見ています。収益性は長期に亘りクオリティの大きな要因の1つであるものの、2025年はこのシグナルですら一時的に逆転し、不安定な企業利益やレバレッジ指標によるプレッシャーを増幅させました。これは循環的な背景によるものであり、クオリティ・プレミアムの構造的な変化を示唆しているわけではありません。

バリュエーションの非妥当性が薄れ、企業利益のすそ野も広がりつつあり、ディフェンシブ銘柄も安定しつつあるなど、市場環境のバランスは改善しつつあります。直近は低迷しているものの、クオリティの長期的重要性には変わりはないと我々は考えます。市場の推進要因が拡大・拡散する中、足元の混乱は、クオリティ・スタイルの持続的な強みと、その長期的な価値にあらためて注目する機会をもたらしていると考えます。

 

 

巻末脚注

1 Bloomberg: European Quality Trade Suffered Historic Defeat: Equity Insight, By Jan-Patrick Barnert and Michael Msika

 

 

当レポート内で提示された見解は、MFSディストリビューション・ユニット傘下のMFSストラテジー・アンド・インサイト・グループのものであり、 MFSのポートフォリオ・マネジャーおよびリサーチ・アナリストの見解と異なる場合があります。これらの見解は予告なく変更されることがあります。また、これらの見解は情報提供のみを目的としたもので、投資助言、銘柄推奨、あるいはMFS の代理としての取引意思の表明と解釈されるべきではありません。予想は将来の成果を保証するものではありません。

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