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The Big Mac

不確実性が投資機会をもたらす可能性

本稿では、不確実な市場環境がもたらし得る投資機会と選別投資の必要性について解説します。

執筆者

Ross Cartwright
リード・ストラテジストストラテジー・アンド・インサイト・グループ

何が起こったのか? マクロ経済の下振れリスクが高まる

米国の関税導入を受け、既に高まっていた地政学的懸念がさらに増大しています。それに伴い、経済成長とインフレ期待だけでなく、財政政策にも劇的な変化が生じています。さらには米国資産への信頼が損なわれ、外国資本が流出する可能性もあり、その裏付けとしてすでに米ドルが大幅に下落しています。

インフレへの影響は一時的にとどまる可能性が高い一方で、世界経済成長への影響が強く懸念されます。センチメント指標は明らかに後退しており、経済指標には、企業や消費者の関税を見越した対応による影響が当面続く可能性があります。 

消費者は多面的な影響を受ける可能性が高く、それにより消費行動に変化が生じる可能性があります。こうした変化をもたらす要因として、消費者心理の悪化による貯蓄増加と消費減少、世界貿易の縮小と企業収益の減速による雇用不安などが考えられます。米政権の政策に対する怒りが高まる中、米国ブランドに対する反発が生じる可能性もあります。またすでに米国を訪れる外国人観光客が減少していることを示すデータもあります。

現時点では景気後退を示唆する顕著なデータは見られないものの、今後数カ月は警戒が必要です。米政権は関税に加え、財政赤字の縮小に向けて財政政策の引き締めも行っています。政府支出の削減は長期的には米国の財政健全化にプラスですが、短期的には経済にマイナスの影響が予想されます。

なぜ重要なのか?市場のボラティリティの増大が予想される

移行は摩擦を生み出すため、足元の環境下ではボラティリティが高止まりすることが予想されます。常に変化するマクロ環境と政策環境の中でアナリストが企業収益予想の調整を図るため、株式市場は当面、経済指標よりも企業の情報開示に大きく反応する可能性があります。輸入大国である米国は、国内需要の低下よりもはるかに複雑で対処が困難な供給の混乱に直面しています。 

我々はその原因と解決策について、次のように捉えています。通常、ボラティリティの原因となるのは市場イベントで、政策立案者が集まってその問題に対処します。政策が望ましい効果を生むかどうかには不確実性があるかもしれないものの、通常はその方向に向かっていきます。この場合、ボラティリティを引き起こしているのは政策とその目標の透明性の欠如です。修正は可能であるものの、本当に修正されるのか、そしていつ修正されるのかは不明であることから、リスクオフの環境下で米ドルと米国国債が低迷するなど、従来の関係性が崩れています。

関税と貿易制限を背景に経済成長見通しが減速する中、企業収益は逆風に直面しています。関税がどこに落ち着くか、相互交渉の結果や他国がどのような報復措置を取るかはまだ分かっていません。これらすべてが不確実な環境を形成する中で、企業は長期設備投資の決定を行わなければなりません。政策が明確になるまでは投資が実行されるかどうかは不透明であり、またプロジェクトの実施と収益の実現には何年もかかるでしょう。さらにより大きな運転資本を要し、利益率にマイナスの影響が及ぶでしょう。

投資家への影響は?投資先を知る

投資はタイミングが重要なため、米国以外の市場にも目を向ける価値があります。米国株式のバリュエーションは歴史的に高い水準にある一方、グローバル株式のバリュエーションは長期平均と同等か、それを下回っています。米国が財政引き締めを開始する一方で欧州と中国は財政拡大を行っており、そうした中ではポートフォリオの分散化と安全マージンの拡大に向けて、非米国株式への資産配分も検討するに値します。

このような環境下では、不確実性を乗り越えられる強靭な企業を選定することが必要です。キャッシュフローの源泉でありリスクであるバリュエーションがより重要になります。セクターや地域間での分散の促進につながり、アクティブ・マネジャーが勝者を識別し敗者を回避するのに有益となります。幅広い銘柄を対象とする指数は、リスクの高い企業や地域に過度にさらされているかもしれません。

選別的であること。相対バリュエーションと政策の違いから、我々は引き続き米国株式よりも非米国株式を選好しています。現在の環境はベータよりもアルファに優位であると我々は考えています。一部のセクター、地域、またはファクターがより強い逆風に直面している一方で、似たような事業を行っている企業でも製造拠点、サプライチェーン、立地により異なる影響を受ける可能性があります。重要で代替不可能な製品を提供し、価格決定力を持つ企業は有利です。

過去の勝者が将来の勝者とは限りません。世界貿易と金融システムへのディスラプション(創造的破壊)が構造的な変化を起こすに伴い、状況は変化する可能性があります。我々は引き続きディフェンシブな投資姿勢が適切と考えており、以下の投資機会が魅力的と見ています。ただし、選別が重要です。

  • 非米国の欧州と日本 > エマージング市場
  • バリュー > グロース
  • 大型株 > 小型株
  • 低ベータ > 高ベータ

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