decorative

グローバル社債:グローバルな分散化とリスク低減の機会をもたらす魅力的な資産クラス

本稿では、グローバル社債が今後、魅力的なディフェンシブ特性や地域的分散、興味深いアルファ創出の機会をもたらす資産クラスとなる可能性が高いと考える理由について解説します。

執筆者

Owen Murfin, CFA
インスティテューショナル・
ポートフォリオ・マネジャー

概要

  

  • グローバル社債は、今後、魅力的なディフェンシブ特性や地域的分散、興味深いアルファ創出の機会をもたらす資産クラスとなる可能性が高いと考えます。
  • 世界の厳しい投資環境にもかかわらず、この資産クラスを支える要因がいくつか存在します。グローバル社債は、マルチアセット・ポートフォリオのリスク を引き下げる必要性を感じている投資家に恩恵をもたらす可能性があります。また、中国のより安定した経済成長見通し、現在進行中の世界的な金融緩和、ドイツの財政拡張計画などのポジティブなマクロ情勢により、世界のマクロ環境は引き続きグローバル社債に対してプラスに働く見込みです。
  • この資産クラスは堅調なファンダメンタルズ、魅力的なオールインイールド(総利回り)のバリュエーション、堅調な資金流入によって支えられています。
  • 全体としてグローバル社債は底堅く推移する可能性が高く、市場の不確実性が高まる中で魅力的なリスク低減の機会を提供すると考えます。

  


魅力的なディフェンシブ特性を備えたグローバル社債

債券リスクの2つの源泉であるデュレーション・リスクと信用リスクについて見ると、グローバル社債は米国社債よりも低リスクです。これは、デュレーション・タイムズ・スプレッド(DTS)がより低いことから明らかです。特に、グローバル社債インデックスのデュレーションは約5.9年と、米国の投資適格社債よりも短くなっており、グローバル社債インデックスのデュレーションが適切であるという点は注目に値すると考えます。つまり、通常の国債インデックスほどは長くないものの、上昇する景気後退リスクに対して潜在的なヘッジを提供するのに十分な長さに設定されています。

グローバルな分散投資は実績のある重要な投資手法です。今年は、特に米国における政策の信頼性に対するリスクが注目されたため、グローバルに分散された戦略を採用することにより有益な結果をもたらしています。グローバル社債は構造的に、米国から欧州、その他の先進国やエマージング諸国に至るまで投資可能なユニバースがより広く、カントリー・リスクもはるかに広範囲にわたります。また、グローバル社債は、増大する国家財政リスクからの分散につながると考えます。国家財政リスクは、世界の投資家が注目する主要な項目の一つです。また、過去数カ月にわたり、米国への過剰なエクスポージャーは、特に米ドル安の観点からグローバル投資家にとって問題となってきました。そして、投資可能なユニバースが広がるほど、各社債が持つ個別要因の幅が広がり、銘柄選択によるアルファ創出の機会が生じる可能性が大きくなります。図表2のとおり、2,000超の発行体で構成され、時価総額合計が約13兆米ドルに及ぶグローバル社債インデックスは、幅広い投資機会を提供します。また、多くの発行体は、それぞれ複数の通貨建てで社債を発行しており、通貨間の相対的な価値を見いだす投資機会を提供している点も注目に値すると考えます。

厳しいマクロ環境にもかかわらず、グローバル社債は今後も十分に下支えされる見通しです。足元の貿易戦争により経済成長見通しが下方修正されたことは事実ですが、世界経済が高い景気後退リスクにさらされているとは考えていません。米国は、消費の底堅さを踏まえると、成長ショックの影響により景気後退に陥る可能性は低いと考えられます。その他では、最近発表されたドイツの財政支出パッケージが欧州の経済成長見通しを押し上げると見込まれます。また、中国の政策当局が財政・金融政策の両方で実施した大規模な景気刺激策が実を結び始め、より前向きな経済成長見通しの基盤となっていることは明るい材料です。全体として、世界的なマクロ経済環境は引き続き同資産クラスにプラスに働く可能性が高いと考えます。

投資家にとってのグローバル社債

グローバル社債は堅調なファンダメンタルズ、魅力的なイールド・バリュエーション、好調な需給要因に支えられています。米国では、マクロ環境が厳しさを増しているものの、投資適格社債のファンダメンタルズは依然として堅調です。一方、欧州も、ユーロ建て投資適格社債のファンダメンタルズは、好調な企業業績と潤沢な手元流動性などが示すように非常に堅調な状態が続いています。

その他の地域では、MFSのエマージング債券チームはエマージング諸国のファンダメンタルズが引き続き底堅いと見ています。バリュエーションの面では、現在のグローバル社債の利回りは約4.6%と、過去10年間で78パーセンタイルに相当する高い水準で、トータル・イールドのバリュエーションの状況は魅力的であると考えます。そして、過去数カ月間の資金流入は堅調で、特に欧州では政策金利の引き下げによって資金流入が促進されました。また、市場金利は高止まりしているものの多くの発行が予定され、これに対して利回りを求める旺盛な需要がみられることから、資金調達のニーズや借り換えリスクが管理しやすくなっています。

グローバル社債の運用チームは、社債市場において不確実性が高くリスク・プレミアムが不十分であることを考慮し、ポートフォリオのリスクには慎重な姿勢をとっています。グローバル社債のスプレッドは、グローバル市場のボラティリティ上昇を受けてやや拡大したものの、歴史的に見ると依然としてかなりタイトな水準にあります。銘柄固有の要因や長期的な課題、経営陣の行き過ぎた積極性によってファンダメンタルズがリスクにさらされている企業や業界を避けることに、運用チームは引き続き注力しています。グローバルな資産配分の積極的な変更もグローバル社債の運用プロセスの重要な一部分です。チームは最近、ユーロ建て投資適格社債のエクスポージャーを拡大する方針を表明していましたが、最近の関税関連の混乱により、短期的に資産配分を再調整して米国や、米国ほどではありませんが公益事業・REITなどのセクターに投資機会があるカナダの配分を回復させました。セクター別では、金融、エネルギー、公益事業、基幹産業を選好しています。各セクターに関しては、エネルギー・セクターでは中流部門や探鉱・生産(E&P)、金融セクターでは保険、基幹産業では工業用化学品といった最もディフェンシブなセグメントを選好しています。

潜在的な投資機会

世界の消費の底堅さは興味深い投資テーマ

  • 米国に関しては、今後の個人消費の減速が景気後退を引き起こすほど深刻であるとは考えていません。
  • 世界的な景気後退への懸念の高まりを織り込んだ最近の市場の歪みは、自動車などの分野で銘柄選択の魅力的な投資機会を提供している可能性があります。
  • ゲームのような一部の一般消費財・サービスのサブセクターは関税の影響を受けにくく、魅力的なディフェンシブ特性を示す可能性があります。

ス プレッドのばらつきは依然として小さく、銘柄選択に一層注力

  • スプレッドの小さいばらつきは、多くの場合、サブ・インデックスレベルでファンダメンタルズの市場評価が誤っていることを示唆しています。
  • そのため、市場の不確実性が高まることを踏まえると、社債エクスポージャーの見直しがアク ティブなポートフォリオ運営とリスク管理の中核となり、ファンダメンタルズ分析の役割が一層大きくなるとみられます。
  • 市場の歪みや社債ファンダメンタルズの誤った市場評価が拡大するほど、堅固な銘柄選択プロセスを通してアルファを生み出す機会が大きくなると考えます。

グローバル化の魅力

  • 米国と米国以外の国々との間で、マクロ・レベルやセクター・レベルでのデカップリング(分断)がより顕著になっています。
  • 米ドル安が続く状況では、米国以外の資産のエクスポージャーの保有が合理的であるといえます。
  • 投資可能ユニバースの拡大によって、より高いアルファを生み出す機会が開けると考えます。

市場の需給はプラス要因

  • 金利上昇は債務削減の促進につながるため、純新規発行額は低水準です。
  • 社債への資金流入は堅調で、特に欧州では政策金利の引き下げが追い風となっています。
  • 株式のエクスポージャーを縮小したいグローバル投資家にとって、グローバル社債は魅力的なオールイン利回りなどの点でリスクを低減する選択肢として適していると考えます。さらに、プライベート・クレジット分野が現在逆風に直面しているとみられることから、同分野への資産配分が大きい投資家にとって、グローバル社債は魅力的なリスク低減の選択肢となりうると考えます。
  • 発行市場での投資機会への需要が示すように、利回りを求める需要は依然として高水準です。

潜在的リスク

重大なグローバル・テールリスク

  • 米国や世界的な景気後退の可能性などのマクロ・リスクがみられます。
  • 地政学的リスクとしては、ロシアとウクライナ、イラン、台湾などが含まれます。
  • 欧州の財政支出目標が期待外れとなり、同地域の経済成長見通しに悪影響を及ぼす可能性があります。

経済成長がどの程度鈍化するかは関税引き上げの規模と幅による

  • 米国の経済成長が鈍化し、インフレ率が上昇する可能性があります。
  • 米国以外でも、経済成長が鈍化し、インフレ率が低下する可能性があります。

インフレや経済成長への影響の相対的な大きさに左右されるFRBの対応

  • 関税政策の不確実性も経済成長の鈍化につながる可能性があります。

グローバル社債のバリュエーションにまだ十分には反映されていないグローバル・リスク

  • 不確実性が高く、スプレッド・バリュエーションによるクッションがほとんどないことを踏まえると、適切な社債選択プロセスが何よりも重要です。
  • 一方で、世界的なリスク・センチメントの大幅な回復によって、投資適格社債のようなよりディフ ェンシブな資産クラスへの投資意欲が損なわれる可能性もあります。

 

 

考慮すべき重要なリスク:
債券に投資する場合、発行体、借り手、取引相手もしくはその他の支払義務を負う主体、原資産の信用力の低下、あるいは経済的状況、政治的状況、発行体固有の状況もしくはその他の状況の変化による結果として、またはその影響により、価値が低下することがあります。特定の種類の債券は、これらの要因による影響が大きいことから、ボラティリティが上昇する可能性があります。また、債券には金利リスクが伴います(金利が上昇すると、価格は下落します)。したがって、金利上昇時にはポートフォリオの価値が減少する可能性があります。

エマージング市場は、先進国市場に比べて市場の構造化および深化が進んでおらず、規制上、保管・管理上または運営上の監視制度が十分に発達しておらず、政治的、社会的、地政学的、経済的な不安定性が高い場合があります。

当レポートの中の意見は執筆者個人のものであり、予告なく変更されることがあります。また意見は情報提供のみを目的としたもので、特定証券の購入、勧誘、投資助言を意図したものではありません。予想は将来の成果を保証するものではありません。

分散投資は利益を保証するものでも、損失を防ぐものでもありません。過去の運用実績は将来の運用成果を保証するものではありません。

ご利用にあたっての注意事項

65386.1
close video