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ガバナンスの重要性:エマージング債券投資におけるサステナビリティ評価

本稿では、エマージング債券投資における財務的重要性、ガバナンス要因、リターンの牽引役についてご説明します。

Vishal Hindocha
サステナビリティ・ストラテジーグローバル・ヘッド

Mahesh Jayakumar
債券リサーチ・アナリスト

サステナビリティ要因の財務的重要性を理解することが鍵

エマージング債券投資においては、サステナビリティに関するリスク要因がリターン特性に与える影響を理解することは不可欠です。MFSでは、エクスクルージョン(投資対象からの除外)ではなく、運用プロセスにサステナビリティ要因を組み入れるアプローチを採用しています。MFSはサステナビリティに係る問題を理由に特定の国や企業を投資対象から除外するのではなく、財務的な視点からサステナビリティを評価します。さて、サステナビリティは財務面に大きな影響を及ぼし、リターンを損なうものなのでしょうか?

エマージング債券投資においても、他の資産クラスと同様に基本的な手法としてサステナビリティ要因を分析の際に組み入れています。しかし、多岐にわたるサステナビリティ要因の中でも、財務上重視すべき要素の優先度は資産クラスや地域によって異なります。

ガバナンス-エマージング債券の分析にとって最も重要

企業におけるガバナンスの重要性を理解するのは難しくありません。例えば、「経営陣が有能であるか」「独立した取締役会があり、方針・戦略実行の観点から経営陣を監視しているか」といった事項を検討すれば良いでしょう。ソブリン債についても、債券を発行した国のガバナンスの質を評価する際に同様のプロセスを適用します。例として、「政権が安定しており、自国の成長に必要な経済環境を整えることができるか」「法の支配が機能していて、裁判所と司法権が存在し、法律を可決することができるか」「汚職が蔓延していないか」などが挙げられます。

エマージング債券のリターンは、こうした重要なガバナンス要因に左右されます。政府が安定的に機能しているなど、ガバナンス面で信用できれば、国民は健康的な生活を送り、社会に貢献し、豊かになっていきます。そして最終的に国家の成長や発展、投資リターンという投資家がエマージング・ソブリン債に期待する結果につながります。このような国の安定や成長に必要な条件を考慮することなく、教育・医療・技術インフラへのアクセスといった社会的要因を評価することは難しいと考えます。また、多くのエマージング諸国が予算を賄うためにコモディティ(鉱物、石油、ガス)の輸出に依存していることや、これらの国々が異常気象にさらされているという物理的リスクなどから、環境要因の重要性が高まっているとの見方を強めています。

リターンの牽引役はエマージング市場と先進国市場で異なる

MFSのアナリストは、スプレッド変動の要因やその結果として生じるリターンについて、運用実績を用いて分析を行っています。分析によると、ガバナンス上のネガティブな情報により急速なスプレッドの縮小や債券価格の下落が見られたことなどから、ガバナンス要因がエマージング債券のスプレッドの動きに最も影響していることが示されました。その次に関連性が高いとみなされたのは社会的要因および社会的安定性で、スプレッドの動きと相関が最も小さかったのは環境要因でした。

エマージング市場と先進国市場の最も大きな違いは、それぞれの要因の重要度が異なることです。あらゆる国家は良好なガバナンスと社会的安定を必要とし、また、移行リスクや物理的リスクにさらされています。G7やG10の主要国では概して政治システムが安定しているため、ガバナンスが正常に機能していることは当然のことと考えられることから、投資家は社会的要因や環境要因を重視する傾向にあります。しかし、発展途上にあるエマージング諸国にとって、正常なガバナンスや社会的要因は先進国よりも深く国の根幹に関わる問題となっています。

MFSの取り組み-エマージング債券戦略のSFDR対応

運用会社にとってはいかに透明性を高め、運用報告や情報開示をより分かりやすい形でお客様に提供するかが課題となっています。欧州のサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)は、EUのグリーンディール(持続可能なEU経済への移行)の片翼を担う法規制であり、ファンドをサステナビリティのレベルに応じて6条、8条、9条に分類します。

運用会社が自ら発信する内容について実行しているかどうかをお客様が評価できるように、質の高い有用な情報開示の方法を示すことがSFDRの核となる部分です。

MFSのエマージング債券戦略は、2023年8月28日に8条に分類される予定です。MFSは、SFDRの発効により拙速に資金の運用方法を見直し、SFDRに沿うような運用を検討したわけではありません。エマージング債券戦略に関して、運用チームではポートフォリオで保有する債券を発行している国に対しガバナンス要因と社会的要因から複合的な評価を行うという形で、当該ポートフォリオの運用プロセスにサステナビリティ要因を組み入れています。MFSがこうした取り組みを行うのは、適切なガバナンスにより社会的課題の改善が進むケースがあるなど、ガバナンスと社会的要因は相互に関係しあっているからです。これを踏まえ、ポートフォリオで保有するさまざまな国におけるガバナンス特性および社会的特性に着目しており、特に社会的特性に関しては、最も基本的かつ発展に欠かすことのできない分野である医療・教育面に重点を置いています。

 

MFSは、環境、社会、ガバナンス(ESG)要因が発行体の経済価値に重大な影響を与えると考える場合、伝統的な経済的要因とともにESG要因をファンダメンタルズ分析において考慮する場合があります。ESG要因がどの程度考慮されリターンに影響を与えるかどうかは、投資戦略、資産クラス、地域・地理的エクスポージャー、特定のESG問題に対する運用プロフェッショナルの見解や分析など、多くの要因に左右されます。ESG要因は投資判断の唯一の根拠となるわけではありません。MFSは、ESG要因を発行体とのエンゲージメント活動に盛り込むことがありますが、これらのエンゲージメント活動が必ずしも発行体のESG関連活動に変化をもたらすとは限りません。

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